知らない貴方と、蜜月旅行
「何十年もねぇ、夫婦やってたら色々嫌なこともあると思うんだよ。喧嘩もするし、若い頃はちょっとのことでヤキモチ妬いたりね?でもね、やっぱりこの人と一緒になってよかった。って、思うんだよ。今は離婚することが当たり前になってきてるけど、あなたたちもお互い好きで愛し合って結婚に至ったんでしょ?だから、お婆ちゃんはね、幸せになってほしいなって、そう思うんだよ」


お婆ちゃんの言葉は、すごく重たくのしかかってきた。私と吏仁は、そういう関係じゃない。好き同士でもなければ、愛し合ってもいない。ただ、吏仁が助けてくれただけ。


だから、私たちは幸せになれないのかもしれない。そう思うと、とてつもなく悲しくなって、突然涙が溢れた。


「あらあら、なんだかごめんなさいね?泣かせるつもりはなかったのよ?どうしましょう…」
「お前がおかしなことを言うからだろう?」
「あー、本当ごめんなさいね…」


違う…違うの…。お婆ちゃんは悪くない。だから謝らなくていいの。なのに、素直に声が、言葉が出てきてくれないっ。


「こいつは、感動して泣いてるだけなんで」
「え?」
「すごく俺も心に響きました。まだ結婚生活一日目ですが、お二人のようなステキな夫婦になれるよう、たくさん会話して、たくさん一緒に過ごします。な、紫月?」


また、吏仁に助けてもらった。吏仁も、お婆ちゃんの言葉で、なにか思うことはあったのだろうか。


「っ、あの、ごめんなさいっ。本当に胸にきてしまって…。彼の言うように、お二人のようなステキな夫婦になれるよう、楽しい結婚生活を送りますね。ここで、お二人に出会えて良かったです。ありがとうございました!」


そう言ったところで、エレベーターが開き、私たちが先に降りる。二人は、笑顔で私たちに手を振ってくれた。


「頑張る必要なんて、ないのよ?無理な時は、お互いに甘えて、助け合うの」
「……はいっ」
「私たちも、あなたたちに出会えて良かったわ。ありがとうね」


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