金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
……え?
………え?
……ええええええええええっっ!?
嘘、え、だって……ええ!?
驚きすぎて、声が出ない。
私は口をただパクパクと、金魚みたいに動かした。
「...あぁ~。こんなはずじゃ無かったんだけど。全然、上手くいかない。」
須藤くんがため息をつきながら片手で顔を覆っている。
えええ、でもでも、じゃあっ、
「…さ、里見先生はっ?…さっき、す、好きって告白してた…よね……?」
私はなんとか声を出して尋ねた。
「あれはっ……長谷川さんのこと…話してて…。」
語尾は静かに消えていった。
須藤くんが、チラリとこちらを見る。
「…里見先生の、名字知ってる?」
み、名字?
そんなの……
「…さ、里見が名字じゃないの…?」
私は恐る恐る尋ねた。
だって、ずっとそう思ってた。
けれど、須藤くんは少し言いにくそうに、目をそらした。
「里見先生の名字は、須藤…だよ。」
……え?
私は驚きのあまり、固まった。
…須藤?須藤里見?
それって……
須藤くんが、諦めたようにため息をついた。
「…俺の、母親の妹、つまり俺の伯母さんなんだ。」
ええええええええ!?
全く考えもよらなかった結果に、驚きが止まらない。
だって、初めて話した時、里見先生自分で「里見です」って言った。
まさか、下の名前を名乗ってるなんて思うはずがない。
須藤くんは、言っちゃった…とでもいうように目を瞑っている。
…でも、それなら納得だ。
あれだけ仲が良さそうにしてたこと。
あ、じゃあもしかして…
「…先週、須藤くん…」
そこまで言ったら、察しがついたようだった。
「…うん、親戚の集まりがあったんだ。」
そっか、だから…。
里見先生の姪と甥もこの学校に通ってるって言ってたけど、それって須藤くんと須藤くんのお姉さんのことだったんだ…。
そして、ふと思い出した。
時々思っていたこと。
里見先生と須藤くんが、似てるなと感じたこと。
そりゃあここまで近い血縁だったら、似てるはずだ。
納得だ。
辻褄が合う。
そして、合点がいった。
……じゃあ、須藤くんが私を
…すす好きってことは
本当………………!?
手が、というかもう全身が震えて、私は須藤くんを見上げた。
嘘みたい。信じられない。
須藤くんの少し赤くなった耳が、全てを表している。
須藤くんは、本当に腹をくくったような顔をした。
「…さっきは、ごめん急に…キスなんかして。
でも、抑えられなかった。」
その言葉だけで、天国にまで吹っ飛ばされそうになった。
…いやダメだ、ここで死ぬなんて、そんな勿体ないこと。
私は喉まで心臓が出かかっているのを感じながら、続けられる言葉を待った。
「…ずっと、好きだったんだ。」
出た。
心臓が。
私は見た。
窒息しそうになった私が息継ぎをした瞬間に、心臓が私以外の人には見えないスピードで、飛び出して引っ込んだのを。
それくらいの衝撃だ。
そして、須藤くんは私の腕を掴んだ。
「……もっとなんだ!」
…ももも、もっと?
須藤くんは、すごく切なそうな顔をしていた。
「多分、長谷川さんが思っているよりもっとだよ。もっと、ずっとだ。」
…苦しい。
…息苦しい。
須藤くんの気持ちが、痛いくらいに伝わってくる。
須藤くんが恋焦がれている相手が、自分だったらと、どんなに思ったか。
「…長谷川さんは、覚えてないと思うけど、半年くらい前に、俺と長谷川さんは会ってるんだ。」
思い出そうとした。
けど、頭が真っ白で何も浮かんでこない。
須藤くんはその日を思い出しているようだった。