金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
りっちゃんは、子供の頃から運動神経が抜群で、頭も良くて、言いたいことが言えて、可愛くて、いつも皆の人気者だった。
女子のリーダーみたいな存在だったし、男子とも混ざって遊んだりして仲が良かった。
先生からも信頼されていて、よくクラス委員も任された。
私とは真反対だった。
そんなりっちゃんが私と仲良くなったのは、やっぱりりっちゃんから声をかけてくれたからだった。
帰り道が同じ方向で、一番最後まで一緒の2人だったから「一緒に帰ろ」って言ってくれたんだ。
私にとっては初めて友達と帰る帰り道で、凄く緊張して、上手く話せなかった。
でも、気持ちを上手に言葉として紡げない私を、りっちゃんは優しく待ってくれて、よく聞いてくれて、よく笑ってくれた。
聞く側に回ることの多い私が、りっちゃんの前では話す側になっていた。
思えば、それは全てりっちゃんの優しさの故だった。
自分の事を一方的に話すのではなくて、あれはどうなのこれはどうなのって、聞いてくれたから。
私は前も言った通り、私は本を読んでばっかりで、声をかけられなくなってしまったために友達ができなくて、人との接し方が分からなくなってしまっただけで、元々凄く大人しいタイプでもなかったから、気の許せる人にはそれなりにお喋りなのだと思う。
初めて話してからすぐに、私はりっちゃんが人気者な理由がよく分かった。
色々あるけれど何よりも、すっごく性格がいいんだなって、身をもって感じた。
すぐに、りっちゃんが大好きになった。
りっちゃんが、その私とのやりとりで私を好きになってくれたかは分からない。
というか、好きになってくれるような要素があったように思えない。
でも、それからはずっと、何をするにもりっちゃんが私のそばにいるようになった。
りっちゃんと居ることで、話しかけられることが多くなった。
女の子にも...男の子にも。
そういう人たちは、私を見ている訳じゃない。
私を足かせに、りっちゃんと仲良くなりたいって思ってる。
でも、りっちゃんはそんな人達に見向きもせずに、時には私を守って、慰めて、支えてくれた。
私と真反対なりっちゃんは、私の憧れになった。
私が初恋の人を諦めたのも、その人が人気者で、私なんかよりもりっちゃんとかと釣り合ってるって思ったら、りっちゃんと釣り合ってる人に恋してる私がどうしようもなく可笑しく思えてきたからだった。
だって、りっちゃんレベルだよ?
私とは格が違う。有り得ない。
私が男だったら、確実にりっちゃんを選ぶもん。
...って。
りっちゃんが言うことには、反対したことが無い。
隠しごとをしたことも、嘘をついたことも。
りっちゃんは全て正しい。
りっちゃんが大丈夫って言ったら大丈夫、ダメって言ったらダメなの。
りっちゃんが欲しいって言ったら、それはりっちゃんが得るべきものだし、りっちゃんが嫌って言ったら、それはりっちゃんには相応しくないもの。
そう思うくらい、私にとってりっちゃんは絶対的な存在だった。
もっと意見言っていいよ。それじゃ琴子が辛いでしょ。
ってりっちゃんは言ったけど、私、辛くないよ?
りっちゃんの幸せが、私にとっての幸せ。
心から、そう思っていた。