金曜日の恋奏曲(ラプソディ)

...でも、譲れないものが出来た。



りっちゃんに、これだけは渡せないってもの。




それが、須藤悠太くんだった。




須藤くんは、『りっちゃんと一緒にいる私』じゃなくて『長谷川琴子』を見てくれている。



でも、りっちゃんと会ったら?



好きになっちゃうに決まってる。




...いやだ。



...そんなの、絶対にいや。




初めて、りっちゃんに対して、暗い感情を持った。



それに、須藤くんが好きになることはなくても、もしりっちゃんが須藤くんを好きになっちゃったら?



そんなの、私は勝てっこない。



今まで、ぼこぼこに負けて惨めになるのが嫌で、私はりっちゃんに譲ってきたんだって分かった。



りっちゃんの幸せが私の幸せなんて、全部綺麗事。



りっちゃんのためじゃない、全部私のため。



りっちゃんに譲ってる自分が、好きだった。



私の憧れる人が幸せになったら、私の鼻が高かった。



りっちゃんの人気を1番気にして、そしてそれを盾にして利用しているのは、私だった。



私はなんてひどい人間なんだろう。



そうは思っても、私はまだりっちゃんに隠し続ける。




こうやって、話さなくてはならないギリギリの時が来るまで、決して自分から言うことはなく。





私って最低だ。



ただの偽善者だ。



罪悪感を感じてるフリをして、でも何も変えようとしない自分に腹が立つ。



私は変わってない。



ずっとずっと弱いまま。




強くなりたいなんて口だけで、強くなるために傷つくことを恐れてる。





そんな自分がもう大嫌いで…。


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