金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
私の大絶叫が部屋中に、キーーーーン、と響いた。
思い切り身を引いた私は、勢い余って椅子ごと後ろに吹っ飛び、後部座席に激突した。
頭が混乱して、何が起きたか把握出来ていない。
…いや、嘘だ、分かっている、十分過ぎるほどに。
だから、こんなにも。
カッと、首から上が一瞬で真っ赤になった。
…………私、今、今っ……!!
…しかも、須藤くん、起きてっ…!!!
「…~~~!!!!」
恥ずかしすぎて、言葉も出ない。
よくもまぁあんなに大胆な真似が出来たもんだ。
自分で自分が信じられない。
今回という今回は、本気で、穴があったら入ってしまいたい気分だ。
須藤くんは、むくりと起き上がって、まだ若干焦点があっていないような目のまま、頭を振った。
それから、乱れた髪に、手ぐしを通す。
「…、ご、ごめんなさい………!!!」
本当に絞り出すように、まずは謝罪の言葉が口から出た。
本当に、なんでここまでこんなに軽々と出来たのか、自分が一番分からない。
自分の度胸の無さは、自分が一番分かっているというのに、なんだこれは。
須藤くんは黙ったまま下を向いて、ボリボリと頭を掻いた。
…で、でも、私が起こしちゃったんだとしても、
「……いつから……?」
意識があったのはいつからか、という意味で、私は聞いた。
黙っている須藤くんにちょっと心臓がヒヤッとして、でも、聞かないわけにはいかなかった。
須藤くんは下を向いたまま、しばらくそのままで、フハッと笑った。
「…ちょっと目ー開けたら長谷川さんが襟足触ってて、しかもそこから下がってくるもんだからビビったわ。」
ぎゃーーーーーっっ!!
また、私は叫んだ。
今度は心の中でなんとか収められたけど。
…そ、そこから気付いてたんだ…いやどこからでももうまずいんだけど!!だけど!!
「…あの、ごめんなさい…。」
もう謝るしか、無かった。
須藤くんが少しドギマギしたように言った。
「え、いや、いいよ…ていうのもなんかおかしいけど。」
俺の髪の毛とかって需要あるの、とどこか自虐的な笑いをする。
…こ、これは…肯定してもキモいし、でも否定する訳にもいかない、ていうか、事実と異なるし(需要少なくともここにはあるし)。
なんとも反応しかねるセリフに、私は曖昧に笑い返した。
須藤くんはまだ寝たりない様子で一度机に突っ伏すと、もぞもぞしながら言った。
「俺のくるくるの天パーなんかより、長谷川さんの髪の毛の方がよっぽど綺麗じゃん。」
くぐもった声に、頭が真っ白になる。
…今の精神状態不安定MAXの私に、そういうセリフはダメですって!
須藤くんが、突っ伏したまま顔だけこちらに向けた。
少し首をかしげながら、須藤くんの透明感のある両目がじっとこっちを見つめている。
私の願望混じりの妄想だって分かってる。
送られる視線が熱を帯びているように感じる、なんて。