あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 目が覚めると朝になっていた。あれから一度も起きずにこの時間になった。カーテンの隙間から白い光が筋となって部屋に描いているのを見ると起きるのにいい時間だろうと思った。ゆっくりと身体を捩るとスルッと小林さんに腕が抜けた。


 昨日は出来なかったことを私はしたいと思っている。それは小林さんの朝ご飯を用意しるということ。昨日のようなカフェでの食事も素敵だけど、今日は私の作ったものを食べて欲しい。


 ご飯を炊いて、お味噌汁を作る。簡単なおかずを作って…小林さんが起きてくるのを待つ。コーヒーの豆をセットして、ゆっくりと香りを立てながら落ちていくコーヒーを見ながら、こんな当たり前のことがこんなに幸せだと思った。いつものありふれた一日が意味を持つのを知った。


 寝室のドアが開くと同時に小林さんが眠そうな顔をしたまま、リビングに入ってくる。後ろの髪に少しの寝癖もあったりして、起きたままの姿でここに来たのだと分かる。


「おはよう。美羽ちゃん」


 まだ眠そうな姿はとても自然体だった。スーツを着込んで営業をする小林さんを何度も見たことがある。恰好いいし、素敵だとも思う。でも、自然体の小林さんがとっても好き。無造作にかき上げる仕草に視線は惹きつけられていた。



「おはようございます。ご飯出来ているので先に顔を洗ってきてくださいね」


「朝ご飯?」
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