あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 時間にしてはそんなになかったと思う。でも、私の中では思いっきり心が揺れてしまっている。泣いてはいけないのに涙がポロリと零れた。それは私を抱きしめる小林さんの手の甲に転がり落ちた。


「ゴメン。美羽。…俺」

「いいんです」


 私がそういうと、小林さんは私の手からお皿を取ると、テーブルの上に置き、私の身体をさっきよりもキュッと抱き寄せた。この温もりも何もかも…私は離れがたい。ずっとこの温もりに包まれていたい。


「美羽。愛している。だから、二年経ったら俺のとこに戻って来るって約束して」


「約束します」


 小林さんは私の唇にそっと自分の唇を重ねていく。何度も何度も…愛はゆっくりとそして激しく私に伝えられた。涙はずっと零れていた。


「待っているから」

「はい」


 私がそういうと、小林さんは少しだけ安心したような表情を浮かべ、私を抱き寄せたのだった。小林さんの腕の中で過ごす時間はもう殆ど残っていない。スーツケースがあるから、時間になればマンションの下までタクシーが来るようになっていた。


「そろそろ行かないといけないね」


「そうですね。電車に乗り遅れると大変ですから」


「そうだよ」


 それなのに小林さんは自分の腕の力を緩めることもなく、私を抱きしめたまま。そして、私もその温もりに甘えた。


「時間だね」


 そう言って小林さんの腕が緩んだのはタクシーが到着予定の一分前。ギリギリだった。


「はい」

「美羽。約束、忘れないで」

「はい。絶対小林さんの所に帰ってきます」
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