あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

再会

 空港について無事に到着したのを実感したのは航空機を降りてすぐのことだった。成田からの直行便なので航空機の中はそれなりに日本語も聞くことが出来た。でも、このシャルルドゴール空港に到着してからは次第に私の耳に届く聞き慣れた言葉は薄れていく。


 二年間という時間をここで過ごすのに不安はある。でも、自分で決めたことだと鼓舞しながらも、それでも次第に不安は増してくる。昨日の夜に小林さんと一緒に過ごしてから時間はそんなに過ぎてないのに、距離はこんなにも離れてしまっていた。たった、一日なのにもう会いたいと思ってしまう。


 私は荷物を受け取ると出国出口に向かうことにした。ゲートを抜ければ私が二年間頑張る場所が待っている。空港にはフランス研究所の社員が迎えに来てくれるようになっていて、私が住むアパルトマンに送って貰うようになっていた。


 そして、明日はパリの街を案内して貰うようになっているはずだった。観光ではなく生活するのに困らないようにと会社の計らいではあるが、それでも不安はある。


 どんな人が迎えに来るのか?女の人か、男の人かも分からない。


 私は辺りを見回して、フッと息を漏らした。考えてみれば、私を迎えに来るはずの研究所の人の顔を私は知らない。


 研究所の人は私の顔を知っているのだろうか?それともテレビでよく見る感じで紙に名前が書かれたのを持っているのだろうか。見回すとそんな紙を持った人は見当たらない。飛行機の到着時間は知っているはずなのに、誰もそれらしき人はいない。


 約束の時間を過ぎていて、すでに十五分も経過している。ここまで何の連絡も無く来ないとなると何かの手違いがあったのだろう。もしかしたら渋滞に嵌ってしまったとか、時間を間違えているとか。


 どうしようかと思った。
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