あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 フライトは順調だったのだと思う。


 私は昨日の夜に寝れなかったのもあって、離陸直後から寝てしまい、目を覚ますとすぐに食事、それに少しだけ手を付けてから、目を閉じる。最初の予定では本を読むつもりでバックの中には小説を忍ばせている。でも、そんな気持ちにはならずにぼーっとした時間を過ごしていた。


 今、小林さんは何をしているのだろうか?


 空港から真っ直ぐにマンションに帰ったのだろうか?


 少しは私の事を考えてくれているかな?


 一つ考えだすと小林さんの事を考えてしまう私がいる。自分で決めたフランス研究所の交換留学なのに、後悔はずっと心の奥底にある。


 私の事を好きでいて…。私の帰る場所をなくさないで…。


 小林さんの気持ちは小林さんの物で誰にも縛ることなんか出来ない。それでも私の帰る場所を望むしかなかった。それからしばらくして飛行機は着陸態勢に入った。



 シャルル・ドゴール空港に着いたのは夕方で、私が初めて降り立ったフランスの地は一日の終焉とも言える真っ赤な太陽の光に包まれていた。

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