あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 時間だけは過ぎていく。


 ここに待っているのが正しいのか、それとも自分でタクシーでも拾って直接研究所に向かう方がいいのだろうかわからない。目の前を歩いている人を眺めていても仕方ないということだけは分かる。本当に困った…。



 私はとりあえず研究所に連絡して支持を仰ごうと公衆電話を探すことにした。研究所の住所も電話番号も分かっている。研究所の所長の指示で今から何をしたらいいのか分かるだろう。


 土地勘は全くないけど、スーツケースの中にはフランスの地図もガイドブックも入っている。研究所に連絡をして、それからタクシーで研究所まで向かうのがいいだろう。旅行で使うくらいのフランス語なら通じると思う。


『タクシーならもしかしたら英語は通じるかも?』


 フランス語から急にタクシーで英語というのが私の自信の無さだった。


 辺りを見回すと電話は空港の端の方に電話のマークを見つけた。日本から持ってきた携帯は使えないことはないけど、ここの公衆電話がいいと思う。


 まずは連絡。そして、行動。


 私はスーツケースを引きながら歩き出すとスーツケースのキャスターの音が聞こえた。その音を聞きながら私は真っ直ぐに公衆電話に向かう。金髪の女の人がちょうど電話が終わったらしく、受話器を置いたところだった。ここで電話をしようと手を伸ばした瞬間…私の歩みは急に止められたのだった。

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