あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

「折戸さん！！」


「おはよう。美羽ちゃん。今日は初出勤だよね。緊張しているでしょ。こういう日は甘いものを食べるといいよ。後から研究所に美味しいチョコレートを差入れするよ。
　それに、キャル。俺が美羽ちゃんに振られたのは事実だけど、だからと言って、それで今まで築いた関係を崩すつもりはないよ。美羽ちゃんが選んだ男は本当にいい奴だし、俺も蒼空のことが今でも大好きだしね。フランスに居る間は先輩として接するつもりだけどそれじゃダメかな？」


　折戸さんの言葉にキャルさんは口を噤むと、折戸さんはニッコリと穏やかに微笑んだのだった。


「キャルが俺と美羽ちゃんのことを心配してくれているのは分かる。でも、そんな心配はしないでいいよ。ありがとうな」


　キャルさんは頭がいいのか、その折戸さんの言葉で理解をしたらしく。少し頬を染めて、コクンを頷いた。そして、静かに一度目を伏せてから、真っ直ぐに折戸さんを見つめ、その後に私を見つめたのだった。


「翔には今度私のお気に入りのワインをご馳走する。その時は潰れるくらいに飲ませてあげる」

「それは楽しみ」


　折戸さんの思いも、キャルさんの思いもとても優しい。最初の日だからこそ、二人の時だからこそ、こうやってキャルさんは聞いてくれたのだろう。タイミングよく折戸さんが登場してしまったけど、それでも、今、私の目の前で二人は笑いながらコーヒーを飲んでいる。


「キャルさん。折戸さん。これからもよろしくお願いします」


　私がそういうと、二人はニッコリと笑い、声を揃えた。


「もちろん」