あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 折戸さんは楽しそうにそういうと、店員さんに椅子を引いて貰って高見主任の前に座った。私は高見主任の横に座るのがいいのか、それとも折戸さんの横に座るのがいいのか…。後ろには椅子を引こうと待ってくれている店の店員が私を見つめている。畏まった店ではないけど、店員の教育はそれなりにされているらしく私の行動を見逃さないように待ち侘びていた。


「美羽ちゃんは俺の隣だよ。向こうには怖いお兄さんがいるからね」


 そんな視線の先には…高見主任。確かに仕事の場では本気で怖い。だからと言って『はい、そうですね』ともいえない。


「そんなことは今日大きな契約を締結した折戸には言われたくないな」

「え、あ。おめでとうございます」



 私が横を向いてそういうと、折戸さんは軽く首を振ると、ニッコリと笑った。さっき、仕事を残してきたと言っていたけど、今日は今日で成果を上げてきているのが折戸さんらしい。高見主任が言うからにはかなりの成果なのだろう。


「支社の皆が頑張ってくれたから、成果になっただけで、俺だけの手柄じゃないからね。たまたま、いいお客さんに出会ってね」


「折戸の新規開拓先で、フランス支社の業績を一気に二倍にさせるほどの大きな契約だろ。今日は契約だけでしばらくしたら日本からも社長クラスが渡仏してくるくらいだろ」


 一気に二倍。社長クラスが渡仏?そんなに大きな契約を結んだとは思えないくらいに折戸さんは落ち着いていて、サラッとしている。新規顧客の上に大きな契約となると折戸さんの手腕に他ならない。でも、それをサラッと流すのが折戸さんらしいと思ってしまった。普通なら有頂天になっても仕方ないくらいの契約だと思う。


「凄いですね」

「たまたまだよ。さ、ワインでも飲もうか。今日は立派なお財布がついているから大丈夫だよ。」

 立派なお財布…高見主任????
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