あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「帰って欲しくはないですけど、でも、折戸さんの将来を考えるとそんなことは言えないです」


「素直な美羽ちゃんらしいね」


 その言葉は優しかった。だからこそ、その優しさに甘えてはいけないとも思う。折戸さんには折戸さんの生活がある。これから、本社営業一課に戻ったら、高見主任の元での充実した生活が待っている。それを妨げてはいけない。


「美羽ちゃんが帰らないでって言ってくれたらいいのにね」


「え?」


 店の前にして入るのを止めてしまった私の足が止まる。馬鹿みたいに折戸さんを見上げる私を折戸さんはニコニコと微笑みながら見つめている。折戸さんの言葉を意味をどう取っていいのだろうか?


「さ、入ろうか。さっきメールが入って、高見主任はもう来ているはずだから」


 折戸さんは先に私を見せの中に入れてくれてから自分が入ると流暢なフランス語で話しながら店の奥の方に入っていく。私もこの一年で随分フランス語での会話には慣れたけど、ここまでの流暢さは備わっていない。店の人に案内された奥のテーブルには昼に会った時のスーツを着た高見主任が居て、店に入ってきた私たちを見ると穏やかに微笑んだ。


「仕事お疲れ様」


「高見主任もお疲れ様です。フランスにプライベートの旅行に来ているのに、仕事なんて頭が下がりますよ」

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