あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「まずはシャンパンを。苦みが少なく女の子が飲みやすいものを選らんで貰いたい。銘柄は任せる」


「畏まりました。何本かお持ちします」


 店員さんは恭しくお辞儀をしてから店の奥の方に入っていった。その後姿を見つめる私に、高見主任はニッコリと笑った。


「先にシャンパンで乾杯をした後に炭酸水でいいかな。アルコールは大丈夫だったよね」


「はい」


 私はアルコールが飲めないわけではない。フランスに来てから飲む量は確実に増えている。日本に居る時より格段に強くなっていると思う。そんな私がワインではなく炭酸水を頼んだのは、ワインを飲んでしまい、自分の感情を吐露してしまうのを恐れたからだった。


「大丈夫です」


 シャンパンでの乾杯から始まった食事は最初は緊張していたものの、アルコールの熱が次第に私の緊張を解いていく。炭酸水を飲むつもりがだったのに、勧められるままにずっとワインを飲んでいる。私にも飲みやすいように高見主任はワインを選んでくれているのか、どれを飲んでも口当たりがいい。


 高見主任と折戸さんによって注文された料理は素材の味を生かしながら、尚且つ美しさを引き立たせる盛り付けがされている。特に野菜をメインで使われたテリーヌは沢山の野菜からの彩が美しいだけではなく、味も抜群にいい。そして、テーブルの上に並べられた料理はワインにとっても合う。


「美羽ちゃん。無理はしないでね。飲みやすいと言ってもアルコールは後から辛くなるから」


「大丈夫だと思います。美味しいです。このワインも食事も」


「美味しいのはいいけど、アルコールだからね」


 念を押す折戸さんの言葉に頷くと、ゆっくりとワイングラスに口を付けた。コクリと喉を通るワインが冷たくて美味しい。
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