あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「なら、美羽ちゃんの顔を見せて、俺を安心させて」


 安心?メトロに向かって歩きながら、小林さんはそんなことをいう。私の手は小林さんの手に包まれたままなのに、フランスに来たのが不安なはずはない。それに私の顔を見ても安心するという意味は分からなかった。顔が癒し系という意味??


 綺麗でもないし、癒し系でもない極々普通だと思う。


「私の顔は癒し系ではないので、安心はしないと思います」


 私がそういうと、小林さんは小さく溜め息を零し、少し強めに私の手を握る。


「本当に美羽ちゃんは俺の気持ち分かってないね。美羽ちゃんの元気な姿が見たかったの。フランスで過ごしている間に心変わりしてないかも心配だったし」


「心変わり??何がですか?」


 私の言葉に小林さんがさっきとは違う大きな溜め息を零した。そして、空港の端に私を連れて行くと、キュッと私の身体を抱き寄せた。小林さんの逞しい腕に包まれ、またドキドキが止まらなくなった。


「それって本気で言ってるの?俺に喧嘩売っている?」


「喧嘩は売ってないです。でも、心変わりの意味が分からなくて」


「美羽ちゃんに何も言わずに来たから、吃驚しているのは分かるけど、下の方ばかり見て歩くから。迷惑だったかと思って。それにこの一年の間に他に好きな人が出来てないかとか?」


 心変わり。


 まさか、そっちの意味での心変わりとは思わなかった。


 それを言うなら、小林さんが心変わりしてないかの方を私は心配していた。

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