あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 フランスでの生活は折戸さんとキャルのお蔭でスムーズに始まった。でも、心の奥底では寂しさがあって、小林さんに会いたいと思う気持ちは降り積もっていて、『仕方ない』と自分に言い聞かせながら過ごしていた。でも、今、目の前に居て…夢のような現実にフッと頬を抓りたくなる。


 会えない時間が愛を育むとか言ったのは誰?
 本当に溢れるくらいに小林さんが好きで堪らない。


 少し離れないと息が苦しくなってしまう。床に座る私から見上げると小林さんの顔があって、つい視線を逸らしてしまった。自分のマグカップに入れたカフェオレに口を付けると、いつもと同じように作ったつもりなのに、甘く感じる。


 砂糖は入れないミルクだけなのに…甘い。


 小林さんは私の淹れたコーヒーを飲みながら、何も言わずに私を見つめていて、二人の間に静かにそして、戸惑うような空気が流れている。そう思うのは私だけだろうか?『距離感が掴めない』私はどうしたらいいのだろう。何が正解で何が間違っているか分からない。


「もっとこっちに来て?」


 どうしていいか分からずにカフェオレを飲む私に小林さんの声が響く。空気を振るわせえるような優しい声は私の身体に降り注ぐ。見上げると、小林さんはまた私を見つめている。


「ここでいいです。クッション気持ちいいし」


 私の声は少し緊張してか掠れていたけど、どうにか小林さんの耳には届いたのだろう。ニッコリと頷くと、手に持っていたマグカップをテーブルに置くと、スッと立ち上がり、私の前に座るとニッコリと笑った。
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