あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 朝起きると傍に一番好きな人がいる。私は研究所に行くいつもの時間に目が覚めると、私の身体には小林さんの腕が巻き付いている。少し身体を動かすと、少しだけ腕の力が強まる。その愛しさを少しだけ堪能することにした。


 研究所に連絡をすると、日本から来た、小林さんの現地ガイドを正式に頼まれることになった。日本語が出来るという点ではキャルも同じだけど、折戸さんの根回しのせいかありとあらゆることが準備されていた。これは折戸さん自身が日本に帰国を決めたと同時に動き出したのだと思う。


 フランス支社の支社長は私と小林さんの関係を内々に知っているようで、ホテルを取らずに私の部屋に泊まることも、私が小林さんのガイドになることも好ましいと思っているようで、ありとあらゆるものが準備されていた。視察としてフランスに来た割には良過ぎる待遇に私も小林さんも首を傾げるくらいだった。


 私の部屋で帰国までの時間を一緒に住むということでホテルは用意されなかったけど、車は用意されてあった。メトロを乗り継いで行くのもいいけど、車があるとなると、動きは急に範囲を広くする。


 しかし、問題は私だった。仕事はキャルが引き受けてくれるということで問題は無い。だけど、私は一年も住んでいるのに観光地にそんなに詳しくは無い。住んでいるからと言って、ガイドが出来るかというとそれは疑問。ある程度のカリキュラムは組まれているから場所までは辿りつけるだろう。だけど、その後…。私は殆ど役には立たないと思う。


 フランス語の簡単な会話くらいは出来るから、小林さんにとっての利点はそれくらいしかない。

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