あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 次に目を覚ました私はベッドに一人だった。身体を起こすと、サラッとシーツが肩から零れ落ち、何も身に着けてない自分の身体が露わになってしまう。シーツの端を掴み、胸元まで引き上げると、自分の寝室を見回す。人の気配はなくて、私は一人だった。小林さんはどこにいるのだろう。それにしても、ちょっとしか動いてないのに、身体が怠くて仕方ない。


 溜め息を零しながら思うのは昨日の夜の甘さは夢じゃないということだけ。シーツの隙間から見える私の肌にはいつ落としたのか分からない花びらのように痕も残っていた。愛しさを覚えると同時に甘えてしまった自分を掻き消したくなった。


「小林さん」


 名前を読んでみたけど、返事はない。視線の先には床に落とされた洋服があって、それらは重なり合って、皺だらけになっている。さすがにこのまま着るわけにはいかないだろう。私は寝室のクローゼットからルームワンピースを取ると、身体に着けてリビングの方に向かうことにした。


 リビングには小林さんがソファに横たわっていて、長い脚はソファからはみ出ている。近くに行くと、ジーンズを履き、シャツは羽織っただけという中途半端な姿で寝ていた。シャツの合わせ目から滑らかな肌が見えていた。どうして小林さんはここで寝ているのだろう。私が前に起きた時にはベッドでぐっすりと寝ていたのに、いつのまにか起きて、リビングのソファに居る。


 それも寝ている。寝るならベッドでもいいのにと思う。でも、小林さんの気持ちよさそうな寝顔を見ていたら、そんなことはどうでもよくなった。
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