あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

迷路の入口なのか、出口なのか

 キャルの結婚式の日から既に一か月が過ぎていた。キャルが結婚を機に仕事を辞めてから、私は研究室を一人で使うことになってしまっていた。


 普段なら数人で使う研究室だけど、キャルの頑張りのお蔭でスケジュールが前倒しされたために、スケジュール的に入ってくるはずの他の研究員はまだ他の研究に掛かりきりなので、研究員が入るまでの間、私は自分だけで研究を始めることになっていた。


 でも、中々研究は進まない。


 キャルと終わらせた研究は一段落。結婚式後の一か月の間にキャルが居ない寂しさを埋めるために必死でレポートを書いていたのが裏目に出て、研究も報告書のレポートも完成という手持無沙汰な状況になってしまった。研究もチームで行うので予備の研究は出来るけど、大筋の研究は皆と一緒ではないと始められない。


 キャルがいない今、没頭できる仕事が無いのは寂しかった。


「今頃、キャルは何をしているかな?」


 一人でいると色々と考えてしまう。


 キャルに会いたい。


 メールはしているし、同じフランスに居るのだから、キャルに会いに行けばいいのだけど、新婚の家に遊びに行くのは少しだけ躊躇する。


 小林さんに会いたい。


 時間がある時は小林さんを思い、好きだという気持ちを募らせていた。頑張ろうと思っていても、一人の寂しさと小林さんの思う気持ちが重なり、苦しさを増す。メールも電話もしているのに、私はやっぱり胸の奥が痛くて堪らない感じだった。
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