あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 私が朝起きて一番に思ったことは『しまった』ということだった。枕元の時計は既に午後一時を過ぎている。折戸さんの乗った飛行機は既に離陸した後だった。昨日の夜。酔いの中にあっても私は必死に手を伸ばし、時計の時間をセットはした。


 でも…記憶はないけど、目覚ましは切られている。


 折戸さんの乗る飛行機が離陸した後に目覚めてしまった残念な私は見送りに行くことも出来なかった。バッグの中から携帯を取り出すと折戸さんからもメールが入っていた。


『よく眠れたかな?俺は今から飛行機の中でゆっくり寝るつもりだよ。ワイン三本はさすがに俺も飲み過ぎだね。でも、楽しかったよ。久しぶりに来たフランスは変わりがなくてよかったと思ったし、美羽ちゃんとも会いたいと思っていたし、美羽ちゃんと今度会えるのは日本かな。美羽ちゃんが研究で頑張っているから、俺も頑張るつもりだよ。新製品を持って日本に帰っておいで。まってるよ』


 折戸さんらしい優しいメールに心を緩ませた。


 日本に帰れるのは後一年後。

 その時は折戸さんが言うように新製品というか、研究の成果を持って日本に帰りたいと思う。そして、その時は昨日、折戸さんが言ったように高見課長と折戸さん、小林さん、そして、私で一緒に飲みたいと思う。



 カーテンを開け、窓を開けると爽やかな風が頬を流れる。新しい朝が始まる。といってももうすぐ昼だという時間だったけど、気持ちは晴れやかだった。そして、私は自分が完全なる二日酔いであるのを実感するのだった。
< 450 / 498 >

この作品をシェア

pagetop