あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 自分の意思でフランス行きを決めたのだから、弱音は吐けない。


 書き上げたレポートを見ながら私は一人で次の研究について考えていた。十分な結果が直ぐに出てくれたらいいけど、そういうわけにはいかないと思う。何度も試行錯誤を繰り返しながら行っていくのだから時間が掛かる。


 この新製品の研究開発はそんなに簡単に終わるというものではなくて、私がフランスに滞在することを許された時間を考えると研究の中途の状態で日本に帰国するのではないかという気もしていた。従来の製品とは全く違う観点から作られた新製品はこれからの製品開発に多大な影響を与えるだろう。


 キャルと私である程度の道は作った。


 これを稀に成功するのではなく確実に成功し、その成果を得ないといけない。茨の道だというのは分かっていたけど、それでも楽しみだとも思う。


 キャルと一緒に仕上げた成果のように満足できる成果が欲しかった。


 たくさんの研究論文を読みながら、空を見上げると蒼い空が広がっている。小林さんのように澄んでいる空を眺めていると、頑張ろうと思う力が込み上げてくる。


『小林さん。私も頑張ります』


 そう思っていた私の足元が揺れたのはそれから数日後のことだった。


 


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