あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

帰国

 中垣先輩は英語は堪能だけど、フランス語は少し心配があるらしいが、専門用語以外の会話などは全く問題がない。私の自分の研究のために揃えていた資料等も隅々まで読み、自分なりに研究の筋道を立てている。勘がいいというか、センテンスの区切りも発音の加減も私と一緒に引継ぎをしている間に会得してしまった。


 私にはキャルと折戸さんに助けられた部分もあったけど、中垣先輩には誰も居ないからと思ったけど、研究を志す人の中では言語の壁は軽く超えられるのかもしれない。私の心配はいらないものだった。中垣先輩がいうには日本でしてもフランスでもすることは一緒だから何も変わらないらしい。


 でも、日本と違って研究所で寝起きすることは出来ないからアパルトマンの準備は私がすることとなった。住むのはキャルが住んでいた部屋を使うことになっている。でも、同じ部屋とは思えないくらいに殺風景な部屋に、住む人が違うとこんなにも違うのかと思った。


 家具は備え付けだけど、ベッドのカバーは新しいものを用意した。それ以外は食器は丸いプレートと、サラダボール。それとマグカップが一つ。箸とスプーンが一つずつ。これだけでいいのかと聞いても普段の生活には全く興味はないらしい。


『デリの美味しい店を書きとめときますね』


『研究所で食べるからいい』


『シャンプーとかリンスとかはどうしますか?雑貨の売っている店とかは?』


『ネットで買うからいい』


 中垣先輩は日本に居る時と変わらない。。


「でも、部屋のことはありがとう。助かった」


 中垣先輩は分かりにくい表情で感謝の気持ちを述べたのだった。
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