あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 日本への帰国が決まってから、私の一年の研究の成果を中垣先輩に細かく引き継いだ。それはレポートもあるけどそれだけでなく、言葉で伝えないといけないこともあった。それが私に出来る最後の仕事だと思うし、中途半端なことで日本に帰国するというのは私も嫌だった。


 中垣先輩との引継ぎは短い期間だったけど、密度は濃かった。


「一年でこの成果は優秀だな」


 中垣先輩から珍しくお褒めの言葉を貰えたので明日は雨ではないかと思うくらいだった。そのくらい、研究についてはストイックで妥協しない。


「ありがとうございます。キャルが居たからここまで出来たとは思います」


「誰が頑張ろうが、坂上が頑張ろうがそれはどうでもいい。結果が全て。とりあえずこの後のことは俺に任せろ。これが終わったら俺も日本に帰国するから、それまでに日本での研究を進めておくように。中途半端な結果を出すことは許さない」


 フランスでの引継ぎが終わったばかりの私に十分な目標をくれるのは中垣先輩らしい。


「はい。今度お会いする時に恥ずかしくないように頑張ります」


「ああ」


「あの、中垣先輩。本当にありがとうございました」


「それは俺のセリフだ。坂上のお蔭で自分の祖母をいい形で見送ることが出来た。だから、元の形に戻っただけの話だから気にしないでいい」
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