あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 中垣先輩の部屋がとりあえず住めるようになり、ホテルから引っ越しをしてから、私は自分の部屋の片づけに入るとことにした。この部屋にはたくさんの思い出がある。何度もキャルと一緒にワインを飲み、床に瓶を転がしたのも今となってはいい思い出だった。


 フランスで過ごした部屋の中が空っぽになったのを見て、私はこの部屋に初めて来た時のことを思い出していた。不安も一杯だったけど、キャルと折戸さんが居てくれたからスムーズに研究に入り、ここまで頑張れた。


 有意義な時間だったと思う。研究だけをしっかりと見つめることが出来たこと。自分の中で研究というものの位置が思ったよりも大きなものであるということ。そして、親友が出来たということ。小林さんに会えない寂しさを感じて、付き合う前に本社営業一課と静岡研究所とで離れた半年とは全く違ったことで、自分の中で小林さんの存在が大きくなっていることも分かった。


 好きな気持ちが私の中で確実に育っている。


 私の荷物は…迷った末に自分の実家に送ることにした。一度実家に戻り、それから新しい部屋を探すつもりだった。小林さんは私に自分の部屋に帰ってくるようにと言われたけど、婚約はしたものの、結婚もしてないから『荷物を送る』ということは出来なかった。


 というか…。


 私は小林さんに帰国が決まったことを言えてなかった。


 中垣先輩がフランスに来てくれたので日本に帰国はすることが出来るようになったというのは伝えた。でも、引継ぎがあるので時期はまだ分からないとしか言ってない。
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