あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「誓いのキスをしてください。」


 私が少し身体を下げると、小林さんがゆっくりとベールを上げる。真っ直ぐに見つめるその瞳はとっても優しくて…幸せそうだった。眩そうに瞳を細め、私を見つめている。


「美羽。一緒に幸せになろう」


 私が頷いて目を閉じると小林さんはゆっくりと肩に手を添え、唇をそっと私の唇に触れた。その瞬間、私の瞳から涙が頬を伝った。たくさんの人の優しさに触れ、お互いに一生の愛を誓うと、心の奥底にあった意地を張っていた私が溶けてなくなっていく。幸せという言葉を身体中で感じた。


「この二人の結婚に異議があるものが居なければ、ここに小林蒼空と美羽を夫婦と宣言します。祝福をしてください」


 ふと見上げると、そこには真っ直ぐに私を見つめる小林さんに優しい瞳があって、私はその小林さんの瞳に微笑み返す。これからの人生、ずっと小林さんの傍に居れると思うと嬉しくて仕方なかった。


 私と小林さんは一旦、控室に入り、小林さんは私を一度、椅子に座らせた。教会の外に招待客が出て、新郎新婦の見送りという形になっている。準備が整い次第新郎新婦の退出という形になっていた。準備が整うまでの間、私と小林さんは控室で二人っきりになった。緊張が抜けた私は椅子に座るとフッと息を吐く。


「美羽ちゃん。大丈夫?」


「はい。でも、緊張してしまって、転ばないか心配でした」


「俺も今までで一番緊張した」


 そうはいうけど、私から見ると小林さんは堂々としていて素敵だった。私は感極まってしまって涙が零れるほどだったのに、小林さんは飄々としているかと思っていた。でも、小林さんも私と同じに余裕がなかったのかもしれない。


「小林さんが格好いいからドキドキしてしまって」


「それは俺のセリフ。美羽ちゃんのドレス姿が余りに綺麗で見惚れたよ。とっても似合うし、それにとっても可愛い。衣装選びの時とは違うと思ってしまった。この可愛い人が俺の奥さんかと思うと俺は幸せだよ」


 真顔で可愛いと言われると私の方が恥ずかしい。

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