あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 コポコポとコーヒーメーカーが音を立てるのを聞きながら 私もキーボードの上に手を滑らす。新製品の開発まで時間がない。高見主任が示した期限は簡単に出来るようなものではないけど、中垣先輩の性格からして、厳しいからと言って最初から白旗を上げるような人ではない。


 コーヒーをマグカップに入れ、中垣先輩の机の上に置く。そして、私はその濃いめのコーヒーにミルクと砂糖を入れてから自分の席に座った。


 いつもの一日の始まりだった。


 肩の力の抜けた私は真っ直ぐに仕事に向かうことが出来ていた。昨日は進まなかった部分も今日は昨日よりは進んでいる。キーボードの上を私は指を動かした。


「どこまで出来た?」


「素材の弾力性の研究が思ったよりもいい成果が出ています。このまま状態を維持することが出来たら、かなり進むと思います」


 中垣先輩はスッと立ち上がると、私のパソコンの横に立ち、データを確認していく。そして、フッと息を吐いた。


「悪くない」


 それだけ言うと自分の席に戻り、パソコンを叩き始めた。『悪くない』とだけだけど、中垣先輩にしたら『合格』ということ。成果というほどではないが、このままのペースですると期限に間に合う率が高くなると思った。

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