俺様御曹司と蜜恋契約
「お!花ちゃんおかえり」

「おかえり花ちゃん」

「花ちゃんお疲れさま」

それからも進むたびに商店街の人たちから声を掛けられたのだけれど、

「これ持って行きな」

「お店の残りだけどどうぞ」

「花ちゃんコレ好きだったよね」

そう言って、お店の商品を次々と渡された。

『小柴精肉店』の小柴さんからは牛肉コロッケを、『丸田ベーカリー』の丸田さんからはアンパンとメロンパンを、『パティスリーSASANO』の笹野さんからは私の大好物の苺のショートケーキを。

「……」

それらを両手に抱えて歩きながらふと考える。

どうして今日に限ってこんなに貰えるの……?

仕事の帰りはいつも商店街を通る。顔を見れば挨拶をして話をしたりはするけれどこうしてお店の商品を貰えることはほとんどない。

それに気のせいかもしれないけど朝の通勤時のときよりも商店街の人たちの顔が生き生きとしている気がするような…。

いつもと少し違う商店街の様子に首をひねりながらしばらく歩くといつの間にか家に着いていた。

「ただいまぁ」

食堂の入口の扉を開けると、おいしそうな香りが部屋いっぱいに広がっていた。これはきっと煮物のにおいだ。肉じゃがかなぁ。

「おかえり、花」

厨房から父親の声が返ってくる。

開店前のお店にはまだお客さんが入っていないので私は4人掛けのテーブルに座ると、帰り道で商店街の人たちから貰ったモノたちをカバンから取り出した。
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