専務と心中!
……ダメだ。

ただ涙を流すだけじゃ飽きたらず、嗚咽まであげてしまった。

南部さんは、決して味方じゃない。
むしろ、私を疑って見張って調べてたのかもしれない。

それでも、今、こうして、私を信じて励ましてくれる。
すがりつきたいほど、心強く感じた。

一筋の光が見えた気がした。

「……ありがとうございます。」
しゃくりあげながらやっとそれだけ言えた。


家に電話してみたけれど……通話中?
父の携帯に電話をかけて、状況を聞いてみた。
けど、逆に父から質問責めに逢ってしまった。

気持ちはわかるけど、私もいっぱいいっぱいで、少し声を荒げてしまった。

あー!うるさいっ!
私だって、事情なんか、わかんないよ。

少し前に別れたヒトが、横領して自殺した。
そりゃかなりショックだけどさ。
私は潔白だ。

そう言い張ったら、父はやっと納得してくれた。
でも、話してるうちに、父の様子が代わった。

『夕べ帰宅しなかったから、にほの身にも何かあったのかと……』
そこまで言って、父は声を詰まらせた。

びっくりしたけれど、親の愛情を感じて、私もまた泣けてしまった。

「……ごめん。大丈夫だから。ごめんなさい。心配かけて。」
『無事ならいい。……ああ、でも、今日も帰宅しないほうがいいんじゃないか?うちにも変な輩(やから)が来たぞ。』
「え!」

本当に、我が家まで、マスコミ?警察?……来るもんなんだ。
怖い……。

「どうしよう……。」
途方に暮れてると、電話の相手が父から母にかわった。

『もしもし?にほちゃん?さっき薫くんから電話あったから、お迎え、頼んだわよ。部屋も貸してくれるって。ほんと、イイ子ねえ。』
もともと薫贔屓の母が、しみじみとそう言った。

「……あ、そう。そういや、さっき、メール来てた。電話してみる。……お母さん、心配かけてごめんね。」
なるべく湿っぽくならないように謝った。

『そう思うなら、幸せになりなさい。こんなことに負けちゃダメ。』
母の言葉が、胸に突き刺さる。

……そんなつもりなかったけど、私……負けそうになってたかも。

どうすればいいのか、わからない。
けど、私を信じてくれる人が、いっぱいいる。
踏ん張ろう。

私は、決意を新たに、次の電話をかけた。

「もしもし?薫?……久しぶりやのに、こんなことで、迷惑かけてごめん。」
『……やっと、電話寄越した。遅いわ。俺、ずっと待機してるのに。会社の地下駐車場。早く来いよ。』

え!?
もう、ココにいるの?
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