専務と心中!
「ああ。それでいい。……もし、誤解じゃなくて、本当にぐっちーが横領に関与してたとしても、におだけは味方になってやれよ。」
「……そうね。悪いことしちゃう専務も、魅力的?と、思えるようになるわ。」

そう言ったら、薫は笑顔を見せてくれた。

「そーゆーのも、有りだな。……まあ、ぐっちーなら上等だろ。どう見ても悪いひとじゃない。もし、におが、俺の師匠に惚れたとか言い出したら、かなり心配だけどな。」

師匠!
泉さん!?

「それはない。怖いもん。泉さん。……てか、薫の元カノ、あれから本当に、泉さんとつきあったの?……止めた?」

ずっと気になってたので、今さらだけど聞いてみた。

薫は、興味なさそうにうなずいた。

「止めてない。あっさり、奈良記念最終日にお持ち帰りされてたな。でも師匠の気に入らなかったみたいで、それっきり。……まあ、よかったんじゃない?師匠と合うはずないんだから。」

……それっきり……か。

やり逃げってことよね?
非道だわ。

さすが、泉さん。

「すごいわねえ。……泉さん、いろんなヒトから恨みかってそう。よく刺されないね。」
「欠点も含めて、魅力的なヒトだから。あのヒトに魅せられたら、一生、恨めないし、離れられないよ。」

そう言ってから、薫は意味ありげな表情を見せた。
何かを言いたそうで、言い出しづらいらしい。

「なに?なんなの?……中沢さんみたいに、薫も、泉さんに惚れてるの?」

そう聞いたら、薫は苦笑した。

「そうだな。でなきゃ、わざわざ師匠に弟子入りしない。……俺、元カノだけじゃなく、けっこう今まで、好きになった女を師匠にとられてんだけどさ、不思議と怒りは感じないんだ。仕方ない、というか。」

薫!
マジで、イイ奴過ぎるっ!
なんだ、それ!

「いやいやいや。女とられたら、怒っていいのよ?恨んで当たり前。てか、泉さんより薫のほうが、ずっとイイ奴だから!」

力説したけど、薫は肩をすくめた。

「どうかな。……でも、俺だけじゃないよ。碧生。あいつの奥さんの百合子ちゃんがさ、碧生に惚れるより先に師匠に惚れたんだけどさ。イロイロあって、今や、百合子ちゃんより碧生のほうが熱心に師匠を応援してるし。……不思議な魅力があるんだよ。師匠には。

えーとー……。
なんか、聞いちゃいけないことまで聞いた気がする。

碧生くんの奥さんが、泉さんに惚れてた?

それはまた……。
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