専務と心中!
「奥さんって、旧華族のバリバリのお嬢様なんでしょ?……泉さんの無頼漢が珍しかったのかしら。」

「まあ、そうかもね。近寄り難い、ほんまもんのお嬢様だよ。……だから俺なんかは、とても手が出せない。……碧生も、師匠も、よく平気で手出しできるって感心してたよ。」

……また、聞いちゃいけないことを聞いたかも。
碧生くんの奥さん、泉さんと、そうゆう関係だったんだ。

ん?
泉さん、既婚者よね?……一応。

わー。
やばいやばい。

逢ったこともないヒトに悪いイメージ持ちたくない。

でも、前に碧生くんが不倫を自虐ネタにしてたのは、そういうことなのか。

「純真無垢なお嬢様だからね、おさまるところにおさまって、ほんと、よかったよ。師匠も、自分じゃ百合子ちゃんを幸せにしてやれないって自覚してたから。……自覚あるなら、手ぇ出すなよ、とは思ったけど。」

薫は珍しく、泉さんに対する不満を口に出した。

ははーん。
なるほどな。

薫も、その百合子ちゃんのこと、好きだったんだ。

「……逢ってみたいな。碧生くんの奥さん。」

何となくそう言ったら、薫が変な顔をした。

なに?

「一応、碧生からそーゆー誘いは来てる。もし、隠れ家が必要なら、どうぞ、って。まあ、子供がいて、賑やかだけど。」

あら、うれしい。

「でも碧生くんに迷惑かけちゃうかな。」

心にもない遠慮の言葉を、薫は鼻で笑った。

「今さら。碧生の性格なら、逆に、手助けしたくて、やきもきしてると思うよ。あいつ、世話焼きだから。」

あー、そうかも。

いつも親切な碧生くん。
ほんと、世話になってるよなあ。

「噂をすれば、碧生からだ。出勤したらしい。」

薫が携帯を見てそう言った。

「何て?会社、どんな感じ?」
「直接聞けば?……あ。ぐっちーが、落ち込んでるって。におと連絡つかないから。……先に、ぐっちーに電話してやれ。」
「……うん。」

私は渋々、自分の携帯を手に取った。

電源、切れてる。
たぶん薫が切ってくれてたのだろう。

立ち上げると、夥しい数の着信履歴とメール件数が表示された。

専務からは……夜通し、何通もメールが届いてる。

「寝てないのかな。専務。」

心配になってきた。

「それどころじゃないだろ。会社からも出られないし。……てか、既に、朝からまた、警察、来てるみたい。にお、休んでよかったな。」

薫の言葉がますます私の心をざわつかせた。

専務……大丈夫かな。
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