専務と心中!
「無職でも、ニートでも、いいです。それこそ、しばらく海外でゆっくりしてもいいし。……お金がななければ、私が働きます。贅沢はさせてあげられないけど。」

そんな言葉が自然と口から出てきた。

すごいこと言ってしまったよ、私。
まるで、プロポーズだ。

『……ありがとう。でも大丈夫だ。株もあるし。ちょうどいい機会だから、会社経営から足を洗って、論文に集中するかな。』

専務は飄々とそう言った。
そして、小さく笑って続けた。

『さっきまで、この世の終わりみたいな気分だった。椎木尾くんの後追い自殺も、頭をよぎった。でも、にほちゃんの声を聞いたら、たいしたことじゃないって思えたよ。にほちゃんがいてくれるなら、俺は大丈夫だ。……逢いに行っていいか?』

逢いに?
ここに来るの?

「えーと……私が、行きますよ?専務、まだ、動けないでしょ?」

そう言ったけど、専務は退かなかった。

『いや。ココには来ないほうがいい。……大丈夫。ほら、ホームレスのおじさんな、彼が力を貸してくれる。』

へ?
まさか、ホームレスの格好でマスコミを欺くの?
……どこの桂小五郎だよ、それ。

『夜には行く。必要なものがあれば、買って行く。』

いや、別に……。
お泊まりセットは、既にあるし。

なんと言っても、勝手知ったる薫の部屋だし。
なーんてことはさすがに言えないけど。


電話を切ったあと、準備したトーストとコーヒーを薫が持ってきてくれた。
「にお。とにかく食えよ。……ぐっちー、におをタクシーで迎えに来るって?マメなヒトだな。」
「うん。食べる。ありがと。専務、夜、来るって……お迎えなんだ。どこ行くんだろ。碧生くん家(ち)?」

よくわからないけど、私は専務を待つことになった。

薫がバンクに練習に出ると、暇に任せてネットニュースを漁った。

まー、好き勝手言われてるわ。
椎木尾さんより、専務が悪いことになってるのね。
くやしいなあ。

てか!
私、めっちゃ悪女みたい。

違うのに。
椎木尾さん……どうして……。

ダメだ。
落ちこむばかり。

死んだヒトを責められない。
けど、椎木尾さん……恨むわ。

専務を巻きぞいにするなんて、ひどい。

ご冥福をお祈りしたいのに。
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