専務と心中!
不意にエントランスのチャイムが鳴った。

専務!?
早すぎない?

マンション入口のカメラを作動させる。
と、見たことのないケバい女性と、カメラを抱えた男性。

……マスコミ?

薫のとこまで押し掛けてくるなんて。
どこまでバレてるんだろう。

もちろん居留守をきめこむ。
そして、薫と専務にメールした。
ココも決して安全でないことを。

……参ったわ。

しばらくして、薫から着信。

『にお?びっくりしたわ。バンクにまで記者が来たわ。とぼけたけどな。……におの元彼にも聞いて回ってるみたい。まあ俺は職業柄、やり玉に挙げられやすいからなー。』
「競輪場にも?……ごめん。迷惑かけて。」
『いや。なんも。師匠が追っ払ってくれたわ。』

さすが、泉さん。

『それで、これからやけど、このまま家にいても、マジに碧生に頼んでもいいけど、ホテル取ったほうが、におも気ぃ使わんでいいかなあ。』
「うん。そうね……専務と相談する。」
『あ。中沢さんだ。……なんか、呼ばれてる。ちょっと待って。』

しばらくくもった音と2人の会話が聞こえてきた。
そして、中沢さんが電話に出た。

『もしもし?布居さん?久しぶりー。なんか、大変みたいだね。』
「ご無沙汰してます。え?今日は、開催日じゃないのに、競輪場にいらっしゃるんですか?」
『うん。ぐっちーが来るんだって。ほら、二千万円、払い戻すみたい。布居さんとの逃亡資金かな。夜逃げするなら手伝うよ。経験者だからね、僕。』

どこまで冗談で、どこまで本気なんだろう。

よくわからないけど、浮き世離れした中沢さんに、心が和んだ。
専務も、そうなのかな。

「二千万円。すっかり忘れてました。そういえば、まだ払い戻してなかったんですね。」
『やれやれ。ぐっちーもだけど、布居さんも、霞喰って生きてるねえ。普通は目の色変える額だよ。』

まあ、そうかもしれない。

でも、所詮あぶく銭。
しかも、専務のお金だし。

「でも専務、大丈夫かな。今そんな大金持ったら、あらぬ誤解をうけませんかねえ?」
少し心配になった。

電話を切って、悶々とする。

……私も、行っちゃおうかな。

シャワーを浴びて、髪を乾かしてると、再びエントランスのチャイムが鳴った。

カメラに映ってたのは、専務と中沢さんと……誰?
けっこう年配の紳士。

見たことないけど、素敵な雰囲気。
誰だろう。
< 110 / 139 >

この作品をシェア

pagetop