専務と心中!
とにかくロックを解除して、部屋に上がって来てもらった。

「にほちゃん!」

ドアを開けるなり、専務が私を抱きしめた。
……胸が……きゅんきゅん言ってる。

逢えてうれしいけど、憔悴して髪も乱れた専務が不憫で……。

「ほら、ぐっちー、邪魔。どうぞどうぞ。」
中沢さんが、容赦なく専務を小突き、同行の紳士を案内した。

「中沢さん、こちらは?」

会釈しつつそう尋ねると、紳士は頬を赤く染めた。

照れてる?

「俺の恩人。……ほら、会社のそばに住んでる、ホームレスのおじさんだよ。」
専務は私の肩を抱いたまま、そう紹介した。

「え!?」

こんなに素敵な紳士だったのか!

化けるものだ……いや、もともと、こーゆーヒトなのに、わざわざボサボサ髪と無精髭に身をやつしているのか。

私があまりにもジーッと見てるからか、ホームレスのおじさんは、面はゆそうにうつむいた。

「ホームレス……にしては、身なりよすぎ。悲壮感ないし。もしかして、ホームレスの振りしてるだけじゃないのー?」

中沢さんが何気なくそう言うと、専務とホームレスのおじさんは苦笑していた。

専務がしみじみと
「まあ、家はないけど、おじさんはすごいヒトなことは間違いない。」
と誉めると、ホームレスのおじさんは肩をすくめた。

「やめてくれ。それ以上言うなら、帰るぞ。」
「ごめんごめん。帰らないで。協力してよ。」

専務とホームレスのおじさんって、本当に親しいんだ。
打ち解け合ってるのがよくわかった。

何だか不思議。
目の前でこうして見てても、違和感ありあり。

「おじさんに変装を教わって、ここまで来たんだ。ちょうどいいから、このままにほちゃんの実家に挨拶に行きたいんだけど。」

専務の言葉にお茶を吹き出しそうになった。

「今?タイミング悪すぎません?」
「そう?むしろちょうどいいと思う。ちゃんとご両親を安心させたげたいし。」

ケロッと専務はそう言った。

「聡(さとる)から連絡あってね、お花さんには帰ってくるなって言われたけど、……むしろ、うちににほちゃんを匿えば?って勧められたんだ。」
「へえ!?」

専務の家に?
それは……かなり敷居が高いかも……。

「どうせ、遅かれ早かれ、そうなるはずだったし、それもいいかなー、なんて。」

専務はウキウキそう言った。

頭に花が咲いてるよ、専務。
もちろん不満はないけど……ちょっと、だけイケズな気分になってきたかも。

「そうなるはずって……聞いてませんけど……。」

小さな抵抗を示したけど、専務は意にも介さなかった。
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