専務と心中!
統さんは、まるでゲームのように、ホームレスの稲毛さんと資産を増やしては、まだ株を手放してない株主と個別に交渉しているらしい。





「そのうちマダムからも株を買い取るかな。」
シンガポールに行った聡くんから、マダムの暮らしぶりを詳しく聞きたいらしく、統さんは迎えに来た関
空でそんなことを言い出した。

「え。だって、株の配当で生活してらっしゃるんでしょ?……そこは、そのままでいいんじゃない?」

だいぶ大きくなったお腹に手を当てて、統さんにお願いした。
統さんは、マダムが離婚前に別の男性の子供を妊娠してた事を、まだ知らない。

「にほちゃんは、ほんと、優しいなあ。」
見当違いに私をほめてくれた専務に、私は苦笑いしか返せなかった。




大荷物を積んだカートを押しながら、聡くんが出てきた。

「おかえりなさい。楽しかった?」
「ずいぶん、日焼けしたんじゃないか?向こうでも自転車に乗ってたのか?」

聡くんは、微妙な顔で統さんと私の顔を何度も見た。

「ただいま。お父さん。におさん。……何て言ったらいいか……」

ん?

「どうしたんだ?マダムが、またイカサマ博打でつかまったのか?それとも、失踪でもしたか?」

飄々とひどいことを言う統さんを、めっ!と怒ってから、聡くんに聞いた。

「あちらは、お元気でした?」

聡くんは、うなずいてから、意を決したように携帯の画像をピックアップして、私たちに見せてくれた。

1枚めは、まだ目の開かない、生まれたばかりの赤ちゃんの写真。

「ほう?かわいいな。」
のんきにそう言った統さんに、聡くんは思い切って言った。

「弟です。」

統さんは
「へ?」
と、真顔でかたまった。

……あーあ。

「かわいい。男の子が生まれたのね。名前は?何て言うの?」
私はなるべく自然にそう尋ねた。

隣で統さんが
「おいおい。計算が合わないだろー。してやられたな。くそぉ。……にほちゃんは知ってたのか……。」
と、ぶつぶつ文句を言ってる。

聡くんは、気遣わしげに統さんを見ながら
「ウーロンです。タン・ウーロン。」
と、教えてくれた。

「うーろん?烏龍茶じゃないよね?どんな字書くの?」

……てことは、マダムの相手の男性は、タンさんっていう中国系のヒトなのね。
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