専務と心中!
薫の車に、5人。
中沢さんの車に、4人。
競走、誘導してた若手の競輪選手の車に6人。
総勢15人の派手な団体は、京都の落ち着いた老舗料亭には全くそぐわなかった。
入る時、お三味線の音が聞こえてたぐらい、粋で素敵な料亭なのに。
「で?自分は?いくらとったん?」
勝利の美酒に程よく酔った泉さんは、そんなことを聞いてきた。
言いたくなくて曖昧に笑ってごまかしてると、ハッキリしない私に泉さんは飽きてくれたらしい。
「薫。チェンジ。」
と、やっぱりなぜか一緒に来た薫の今の彼女をかまいだした。
「チェンジされちゃった。」
「……助かったよ。かなり気まずかった。」
薫はそう言って、首もとをゆるめた。
「喧嘩でもした?」
冗談のつもりでそう聞いた。
でも、薫は顔をちょっと歪めた。
「いや。別れ話?」
「あ~~~~。」
展開、早いな。
本当に、あの彼女さん、泉さんに乗り換えるつもりかな。
……何だかなあ。
「あれ?ぐっちーは?」
中沢さんの声に振り向くと、さっきまでおとなしく横になってらした専務の姿が消えていた。
どうしたんだろ。
キョロキョロ見回したけど見当たらない。
お手洗いでも行かれたのかしら。
痛み止め、効いてはるのかな?
そっと、座敷を抜けて廊下を進む。
お手洗いは……こっち?
「専務~?」
小声でそう呼びながらウロウロ歩いてると、スーツと障子が開いた。
ひょこりと顔を出したのは、専務と、それから……さっきご挨拶してくださってた若女将。
しかも、若女将、泣いてる!?
えーとー……。
もしや、なんか、修羅場?
まさか!
さっきの薫みたく、別れ話とか?
ドキドキしてると、若女将は慌てて涙を拭いて、私に会釈してぱたぱたと去って行った。
「あ。にほちゃん、何か、誤解してないか?」
赤ん坊のハイハイのように、四つ足で廊下に這い出てきた専務はそう聞くと、ちょんと私の額を人差し指で軽く小突いた。
「……誤解~?……若女将、美人ですよね。若そうやけど、落ち着いてはるし。……素敵な女性だと思いますよ。」
本心なんだけど、何となく心の中で、もやもやしていた。
「まあ……そうだな。でも、誤解だよ。」
そう言って、専務はちょいちょいと、手招きして私に耳を貸すよう身振りで指示した。
……そう言えば、専務のオーバーアクションって留学してたからだけじゃなく、奥さまが外国人だからもあるのかな……と、改めて気づいた。
中沢さんの車に、4人。
競走、誘導してた若手の競輪選手の車に6人。
総勢15人の派手な団体は、京都の落ち着いた老舗料亭には全くそぐわなかった。
入る時、お三味線の音が聞こえてたぐらい、粋で素敵な料亭なのに。
「で?自分は?いくらとったん?」
勝利の美酒に程よく酔った泉さんは、そんなことを聞いてきた。
言いたくなくて曖昧に笑ってごまかしてると、ハッキリしない私に泉さんは飽きてくれたらしい。
「薫。チェンジ。」
と、やっぱりなぜか一緒に来た薫の今の彼女をかまいだした。
「チェンジされちゃった。」
「……助かったよ。かなり気まずかった。」
薫はそう言って、首もとをゆるめた。
「喧嘩でもした?」
冗談のつもりでそう聞いた。
でも、薫は顔をちょっと歪めた。
「いや。別れ話?」
「あ~~~~。」
展開、早いな。
本当に、あの彼女さん、泉さんに乗り換えるつもりかな。
……何だかなあ。
「あれ?ぐっちーは?」
中沢さんの声に振り向くと、さっきまでおとなしく横になってらした専務の姿が消えていた。
どうしたんだろ。
キョロキョロ見回したけど見当たらない。
お手洗いでも行かれたのかしら。
痛み止め、効いてはるのかな?
そっと、座敷を抜けて廊下を進む。
お手洗いは……こっち?
「専務~?」
小声でそう呼びながらウロウロ歩いてると、スーツと障子が開いた。
ひょこりと顔を出したのは、専務と、それから……さっきご挨拶してくださってた若女将。
しかも、若女将、泣いてる!?
えーとー……。
もしや、なんか、修羅場?
まさか!
さっきの薫みたく、別れ話とか?
ドキドキしてると、若女将は慌てて涙を拭いて、私に会釈してぱたぱたと去って行った。
「あ。にほちゃん、何か、誤解してないか?」
赤ん坊のハイハイのように、四つ足で廊下に這い出てきた専務はそう聞くと、ちょんと私の額を人差し指で軽く小突いた。
「……誤解~?……若女将、美人ですよね。若そうやけど、落ち着いてはるし。……素敵な女性だと思いますよ。」
本心なんだけど、何となく心の中で、もやもやしていた。
「まあ……そうだな。でも、誤解だよ。」
そう言って、専務はちょいちょいと、手招きして私に耳を貸すよう身振りで指示した。
……そう言えば、専務のオーバーアクションって留学してたからだけじゃなく、奥さまが外国人だからもあるのかな……と、改めて気づいた。