専務と心中!
「いや、にほちゃんは自由にしてくれてたらいいんだけどね。……ただ、こうして思わぬご縁がきっかけになって……俺のことを意識してくれたら、うれしい。今は、それでいいよ。」
私に否定されるのを避けたのだろう。
専務はそう言って、にっこりとほほえんだ。
「ところでさ、番手捲りって、二段駆けと同じだよね?」
一行が祇園に繰り出すのを見送ってから、薫が専務をご自宅に送ってくれた。
その車内で、専務がそう尋ねた。
「んー。似てるけど、イコールじゃないです。ね?」
運転中の薫にそう話を振った。
「……そうですね。二段駆けってのは主体がラインやけど、番手捲りは個人プレイというか。今日、南関ラインがやろうとしてたのが二段駆け。俺が分断しなきゃ、ロケット発進した2番めの自力選手か、その後ろのマーク屋が優勝してた思います。そんな風に、とにかくラインの中の誰かが優勝すればいいというラインの作戦ですね。」
そこまで言ってから、薫はちょっと振り返って苦笑した。
「でも、俺は明確に師匠に優勝させたかったんで、結果オーライですよ。……まあ、正直なところ、師匠にあっさり番捲(ばんまく)されて、ショックでしたけど……展開上あれが最善の手だったと思います。」
やっぱり、ショックだったのか。
そりゃそうよね。
薫、使い捨てされちゃったんだもん。
「あのさ、素人意見だけど、君、せっかく分断したんだし、あのままずっと南関2人の後ろを走って、最後に差すとか、ダメだったのかい?それなら、泉くんじゃなくて、水島くんが優勝だったかもしれないんじゃないのか?」
専務は不思議そうにそう聞いた。
薫は肩すくめた。
「……そんなことして、万が一俺が優勝なんかしたら、師匠に後々までネチネチ言われちゃいますよ。俺がもっと強けりゃ、師匠とワンツーできた……俺が弱いから、師匠に見捨てられたんですよ。」
薫らしいなあ。
「うーん。水島くん、いさぎよすぎだよ。……カッコイイけど……勝負の世界にいるのに、そんなにクリーンで大丈夫なのか?」
専務は、どうやら薫のヒトの良さにヤキモキしてるらしい。
何となく、薫のことを気に入ってらっしゃるのかもしれない。
「俺には卑怯なことはできませんから。……もっと強くなりゃ、自然と結果がついてくると思ってます。」
薫は前方を見つめたままそう言った。
私に否定されるのを避けたのだろう。
専務はそう言って、にっこりとほほえんだ。
「ところでさ、番手捲りって、二段駆けと同じだよね?」
一行が祇園に繰り出すのを見送ってから、薫が専務をご自宅に送ってくれた。
その車内で、専務がそう尋ねた。
「んー。似てるけど、イコールじゃないです。ね?」
運転中の薫にそう話を振った。
「……そうですね。二段駆けってのは主体がラインやけど、番手捲りは個人プレイというか。今日、南関ラインがやろうとしてたのが二段駆け。俺が分断しなきゃ、ロケット発進した2番めの自力選手か、その後ろのマーク屋が優勝してた思います。そんな風に、とにかくラインの中の誰かが優勝すればいいというラインの作戦ですね。」
そこまで言ってから、薫はちょっと振り返って苦笑した。
「でも、俺は明確に師匠に優勝させたかったんで、結果オーライですよ。……まあ、正直なところ、師匠にあっさり番捲(ばんまく)されて、ショックでしたけど……展開上あれが最善の手だったと思います。」
やっぱり、ショックだったのか。
そりゃそうよね。
薫、使い捨てされちゃったんだもん。
「あのさ、素人意見だけど、君、せっかく分断したんだし、あのままずっと南関2人の後ろを走って、最後に差すとか、ダメだったのかい?それなら、泉くんじゃなくて、水島くんが優勝だったかもしれないんじゃないのか?」
専務は不思議そうにそう聞いた。
薫は肩すくめた。
「……そんなことして、万が一俺が優勝なんかしたら、師匠に後々までネチネチ言われちゃいますよ。俺がもっと強けりゃ、師匠とワンツーできた……俺が弱いから、師匠に見捨てられたんですよ。」
薫らしいなあ。
「うーん。水島くん、いさぎよすぎだよ。……カッコイイけど……勝負の世界にいるのに、そんなにクリーンで大丈夫なのか?」
専務は、どうやら薫のヒトの良さにヤキモキしてるらしい。
何となく、薫のことを気に入ってらっしゃるのかもしれない。
「俺には卑怯なことはできませんから。……もっと強くなりゃ、自然と結果がついてくると思ってます。」
薫は前方を見つめたままそう言った。