専務と心中!
あ、そうだ。
「とりあえずバイトくん2人来るんですけどね、編纂委員の先生にいただいた履歴書見て、驚きました。そのうち1人がアメリカの日系三世らしいです。高校までアメリカにいたのに、日本語どころか昔の文字?古文書?まで読めるって、すごいですね。」
世間話のつもりでそう言ったけど、よく考えたら、これって個人情報を漏らしてしまったのかしら。
まあ……子持ち既婚者なことをつっこまなければ、いいか。
峠さんは少し首を傾げた。
「……聞いたことある気がします。学会発表で話題になってような……。」
「え?そうなんですか?……えーと、お名前は確か、あおい。……天花寺(てんげいじ)碧生くん……。」
仰々しいお公家さんの名字と女みたいな名前が印象的だったっけ。
「ああ。そうだ。天花寺くん。私は読んでませんが、論文もずいぶんレベルが高かったとか。まだM1なのに優秀な研究者らしいですよ。」
そう言ってから、峠さんは柔らかく微笑した。
「……イイヒトに来てもらえてよかったですね。頼りになりますよ。」
「ありがとうございます。」
なんとなく、峠さんにそんな風に言ってもらうと、それだけで前向きになれる気がした。
てかー!
帰りのバスの中で峠さんにいただいた原稿を読ませてもらったけど……何だ?これ。
聞いたことないすっごく難しい専門用語を頻出させて、かなり高度なことを言ってるのに、わかりやすい。
コレ読んだだけで、美術を学んで理解できた気になれるわ。
峠さんって、ほんっとに有能で親切なヒトなんだなあ。
南部室長が懐くのも、社長が頼るのも、何となくわかる気がした。
本社に戻ると、南部室長が峠さんの原稿を楽しみにしていた。
南部室長はじっくり時間をかけて原稿を読んだ後、ボソッとつぶやいた。
「峠くん、これ、会社にアピールしてるよね……。」
「?……どういう意味ですか?」
「図版。」
そう言って、南部室長は原稿の一番後ろの表を見せてくれた。
峠さんが、ご自分の執筆箇所に貼り付けたい図版の一覧表らしい。
「けっこうたくさんありますね~。まあ、美術分野ですもんね。」
私は暢気にそう言った。
でも南部室長は、肩をすくめた。
「よく見てみぃ。我が社の所有する美術品だけちゃうわ。……3分の1は、他所(よそ)さんのモンやわ。いずれは購入してくれってアピールやろ。とりあえず今回は布居さんの仕事やで?」
「え!?」
びっくりした。
私?
え?
「とりあえずバイトくん2人来るんですけどね、編纂委員の先生にいただいた履歴書見て、驚きました。そのうち1人がアメリカの日系三世らしいです。高校までアメリカにいたのに、日本語どころか昔の文字?古文書?まで読めるって、すごいですね。」
世間話のつもりでそう言ったけど、よく考えたら、これって個人情報を漏らしてしまったのかしら。
まあ……子持ち既婚者なことをつっこまなければ、いいか。
峠さんは少し首を傾げた。
「……聞いたことある気がします。学会発表で話題になってような……。」
「え?そうなんですか?……えーと、お名前は確か、あおい。……天花寺(てんげいじ)碧生くん……。」
仰々しいお公家さんの名字と女みたいな名前が印象的だったっけ。
「ああ。そうだ。天花寺くん。私は読んでませんが、論文もずいぶんレベルが高かったとか。まだM1なのに優秀な研究者らしいですよ。」
そう言ってから、峠さんは柔らかく微笑した。
「……イイヒトに来てもらえてよかったですね。頼りになりますよ。」
「ありがとうございます。」
なんとなく、峠さんにそんな風に言ってもらうと、それだけで前向きになれる気がした。
てかー!
帰りのバスの中で峠さんにいただいた原稿を読ませてもらったけど……何だ?これ。
聞いたことないすっごく難しい専門用語を頻出させて、かなり高度なことを言ってるのに、わかりやすい。
コレ読んだだけで、美術を学んで理解できた気になれるわ。
峠さんって、ほんっとに有能で親切なヒトなんだなあ。
南部室長が懐くのも、社長が頼るのも、何となくわかる気がした。
本社に戻ると、南部室長が峠さんの原稿を楽しみにしていた。
南部室長はじっくり時間をかけて原稿を読んだ後、ボソッとつぶやいた。
「峠くん、これ、会社にアピールしてるよね……。」
「?……どういう意味ですか?」
「図版。」
そう言って、南部室長は原稿の一番後ろの表を見せてくれた。
峠さんが、ご自分の執筆箇所に貼り付けたい図版の一覧表らしい。
「けっこうたくさんありますね~。まあ、美術分野ですもんね。」
私は暢気にそう言った。
でも南部室長は、肩をすくめた。
「よく見てみぃ。我が社の所有する美術品だけちゃうわ。……3分の1は、他所(よそ)さんのモンやわ。いずれは購入してくれってアピールやろ。とりあえず今回は布居さんの仕事やで?」
「え!?」
びっくりした。
私?
え?