専務と心中!
室長、椎木尾さんと私が合わない、って思ってたのかな。

さすがに賛同しかねて、私は黙ってうつむいた。

すると、室長は、私が落ち込んでるか、泣いてるように思ったらしい。
慰めなきゃいけない使命感に燃えたらしく、慌てて口を滑らしてしまったようだ。

「いや、ほんまに別れてよかったんや。……椎木尾主任はたぶん……」

うん?

「もしかして、室長、何かご存じでしたか?椎木尾主任に他につきあってる女性がいるとは、何人かから聞きましたが。まあ、私ではイロイロ釣り合わなかったのかなと、神妙に受け止めてますので、……室長?」

私の言葉の途中から、室長の様子がガラッと変わった。
じゃらじゃらした雰囲気が消え、鋭いねちっこいスナイパーのような目。

「……椎木尾主任には、布居さん以外にも女性がいたんか。そりゃ、けしからんなあ。……どこの誰かも聞いてるか?」

室長にそう尋ねられ、私はぷるぷると首を横に振った。
なんだろう?
いつもと違い過ぎるよ、室長。
なんか……怖いし……。

黙って、じっと室長を見つめる。

そうか、とつぶやいて、室長はいつもの室長に戻った。

……えーとー……。

「すまなかったね。短い間やったけど、ありがとう。布居さんが前向きに仕事に取り組んでくれるようになったことやし、わしも安心して経理に戻れるわ。まあ、困ったことがあったら、いつでも相談してくれたらええから。」

室長はそう言って、そそくさと席を立った。
「人事と経理、回ってくるわ。」

……えー?
意味わかんない。
わかんないけど、何か私には知らされないオトナの事情があることはヒシヒシと伝わってきた。


とりあえず、専務に文句言わなくちゃ!
部屋の移転も、室長代理も、無理矢理すぎて不信感しかない。
会社を私物化しちゃってない?

ぷんぷん怒りながら、隣室へ。

「布居さん?大丈夫ですか?」
そう言って、碧生くんはぷっと笑った。

「……って聞くの、これで、今日、三回目?何か、布居さん、今日はめっちゃ大変な日ぃですね。」
明るくそう言われて、私の毒気も抜けて、笑えてきた。

「ほんまやわ。恋人と別れて、専務が離婚して、しかも横暴やで。専務、室長代理になるねんて。この部屋、わざわざ役員フロアに引っ越すねんて。魔性の女どころか、私、振り回されてるよねえ?」

……まったく、どうしてこんなことになったんだか。
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