専務と心中!
「……峠先生。おかしいですか?」
憮然としてそう聞いた。
峠さんは、慌てて笑いをかみ殺した。
「いや。……専務も必死みたいですね。」
「必死?」
意味が分からない。
むっつり黙ってると、碧生くんもおかしそうに突っ込んだ。
「根回し?顔見せ?……もしかして、編纂室を役員フロアに移したのも、社長達重役への周知だったのかな?単に、布居さんのそばにいたかっただけじゃなくて。統(すばる)、周りから固めてってるわけだ。やるじゃん。」
……知らない。
そんな専務の思惑なんか、知らない。
ますますむーっとして口を尖らせてると、遥香さんが楽しそうに笑った。
「それだけ本気ってことじゃないですか?素敵じゃないですか!」
……本気……か。
確かに、単に遊びで手を出したいだけなら、わざわざ息子さんを紹介なんかしないよね。
本気で……本気って……つきあう、とかじゃなくて、家族になる、ってことを目標にしてるのかな。
……重い。
重いよ、専務。
離婚したばかりなのに……そんな焦らなくても……。
コーヒーを飲み終えて、ソファから立ち上がってから、峠さんが言った。
「……先ほどの専務とのやりとり……必要な資料を的確に判断してすぐに提供されて……よく勉強されてますね。布居さん。頼もしく思いました。」
ほめられた!
心が、気持ちが、ぴょん!と弾んだ。
「ありがとうございます!本当はまだまだなんですけど……峠先生や碧生くんに助けていただいて、何とか心折れずにがんばってます。それに、今日からは、遥香さんもいらっしゃったし、もっと勉強します。」
そう言ったら、峠さんはほほえんでうなずいた。
「がんばってください。布居さんを抜擢された専務のためにも。」
……うぉっ!
それは、プレッシャーだわ。
私は首を傾げて、笑ってごまかした。
峠さんは、会釈して、編纂室を出て行った。
抜擢、か。
よくわかってなかったけど、私、ただ単に部署が異動になっただけだと思ってた。
でも、社史編纂室に来てから、私のお給料がかなり増えた。
たぶん一般職OLから、社史編纂室前任者と同じ総合職に切り替えてくれたんだろうと、思った。
でもそれも違ったことがわかった。
先週、年度末で各部署が大量廃棄した古い内部資料を碧生くんと漁ってきて、いろんなことを新たに知った。
その中の一つが、職等と給与の階級。
憮然としてそう聞いた。
峠さんは、慌てて笑いをかみ殺した。
「いや。……専務も必死みたいですね。」
「必死?」
意味が分からない。
むっつり黙ってると、碧生くんもおかしそうに突っ込んだ。
「根回し?顔見せ?……もしかして、編纂室を役員フロアに移したのも、社長達重役への周知だったのかな?単に、布居さんのそばにいたかっただけじゃなくて。統(すばる)、周りから固めてってるわけだ。やるじゃん。」
……知らない。
そんな専務の思惑なんか、知らない。
ますますむーっとして口を尖らせてると、遥香さんが楽しそうに笑った。
「それだけ本気ってことじゃないですか?素敵じゃないですか!」
……本気……か。
確かに、単に遊びで手を出したいだけなら、わざわざ息子さんを紹介なんかしないよね。
本気で……本気って……つきあう、とかじゃなくて、家族になる、ってことを目標にしてるのかな。
……重い。
重いよ、専務。
離婚したばかりなのに……そんな焦らなくても……。
コーヒーを飲み終えて、ソファから立ち上がってから、峠さんが言った。
「……先ほどの専務とのやりとり……必要な資料を的確に判断してすぐに提供されて……よく勉強されてますね。布居さん。頼もしく思いました。」
ほめられた!
心が、気持ちが、ぴょん!と弾んだ。
「ありがとうございます!本当はまだまだなんですけど……峠先生や碧生くんに助けていただいて、何とか心折れずにがんばってます。それに、今日からは、遥香さんもいらっしゃったし、もっと勉強します。」
そう言ったら、峠さんはほほえんでうなずいた。
「がんばってください。布居さんを抜擢された専務のためにも。」
……うぉっ!
それは、プレッシャーだわ。
私は首を傾げて、笑ってごまかした。
峠さんは、会釈して、編纂室を出て行った。
抜擢、か。
よくわかってなかったけど、私、ただ単に部署が異動になっただけだと思ってた。
でも、社史編纂室に来てから、私のお給料がかなり増えた。
たぶん一般職OLから、社史編纂室前任者と同じ総合職に切り替えてくれたんだろうと、思った。
でもそれも違ったことがわかった。
先週、年度末で各部署が大量廃棄した古い内部資料を碧生くんと漁ってきて、いろんなことを新たに知った。
その中の一つが、職等と給与の階級。