専務と心中!
ここしばらく誰ともセックスしてなかった私は、久しぶりのめくるめく快感に、声も出なくなってしまった。

……年甲斐もなく……専務……すごい。
いや、ある程度、歳をとってらっしゃるから、がっついてなくて、ねちっこいのかしら。

少しイケズなぐらい翻弄されて、私はただただ専務にしがみついて、間断なく与えられる快楽の波に溺れた。

気持ちいい。
このまま息絶えてしまいたいほど、気持ちよかった。


「にほちゃんは本籍地、京都だけど、お父さんかおじいさんは滋賀県なのか?」

ピロートークじゃないな……ポリネシアンセックスというか……繋がったまま、専務はそんなことを聞いてきた。

「……はあ。祖父は、彦根出身で、就職で京都に移り住んだようです。」

私の中でたまに存在を主張されるのを感じながら、専務の質問に答えた。

「やっぱり!絶対そうだと思ったよ。」

うれしそうにそう言って、専務は私の頬や額、まぶたにキスを降り注いだ。

くすぐったくて、目をつぶる。
と、唇をこじ開けるように舌が差し込まれる。

……また……もう……。

ずっと自分を見てろ。
目をそらすことも、閉じることも、許さない。

……という意味なのだろうか。


上も下も、私の中を心ゆくまで蹂躙し、やっと専務は続きを話すべく、唇をずらしてくれた。

「にほちゃんの、『にほ』は、『鳰の海』の『にお』だし、名字の『布居』の『居』の字は……かつて井伊家の領地に多いだろ?絶対、近江の家の子だと思ってたよ。」

専務はそう言って、また頬にキスした。

「そうなんですか?……『にほ』は『カイツブリ』って言う、琵琶湖の水鳥だそうですけど……『居』の字のことは知りませんでした。」

そう答えると、専務はキョトンとした。

「……そうか。知らないか。井伊家に遠慮して、普通なら井戸の『井』の字を使う名前も、敢えて『居』に改名したんだってさ。藤居さんとか、中居さんとか……彦根周辺は多いんだ。」

知らなかった!
確かに、布井のほうが簡単なのに、敢えての「居」の字だったのか。

「よくご存じですね。」

少し感心してそう言った。
ら、専務は得意そうに、私を穿った。

「まあ、うちも近江には縁が深いから。安土や五個荘からお嫁さんをもらってた記録もあるし。」

……なるほど。

専務ん家(ち)ほどの名家なら、婚姻の記録もかなり古くから残ってるのだろう。
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