専務と心中!
「俺は、バツイチだし、大きな息子もいるけど……にほちゃんのご両親は、結婚を許してくれるだろうか。」

専務はそう呟いて、私をぎゅーっと抱きしめた。

……今のって……プロポーズなのかしら?

「あのぉ。うちの親の前に、まずは私にも尋ねるべきじゃないんですか?」

何となく納得できなくて、私は口をとがらせた。
専務は、ふふっと笑って、私の頭を撫でた。

「もうとっくに答えはもらってると思ってたよ。まだ足りなかったか?よしよし。ごめんな。……俺と一緒に生きてほしい。結婚しよう。」

キラキラと輝く瞳、甘ったるい声。

やばい。
クラクラしそう。

「……今、言われても……セックス中の戯れ言みたいで、なんか、嫌~。」

強がってそう言ったけど、全く説得力がなかった。

……喜んでしまってる、私……全身で。
何を言っても、ただ甘えてワガママを言ってるみたい。

案の定、専務はいっこうに気にする様子もなく、ニコニコうなずいた。

「そうだな。じゃあ、明日の朝、改めてプロポーズするとしよう。……今夜は、このまま眠らせてくれ。」

そう言って専務は、私を腕に抱いたまま、目を閉じた。

「このまま、ですか?あの……専務……。えーと……途中で……ゴム、外れちゃいません?」

小さくなったら、私の中から専務は抜けても、避妊具だけが残ってしまうかもしれない。
そうしたら、避妊の意味ないんじゃないかな。

さすがに、バツイチの専務と、それも会社の上司との、できちゃった婚は……気まずい。

けっこう切実にそう言ったけど、専務はむしろニヤリと笑った。

確信犯?

じーっと見つめると、専務はいたずらっ子のような目で軽くウィンクした。

「今、つけてないよ。さっき、取った。これで授かったら、めちゃくちゃラッキーだな。」

な!
何だとぉ!?

「ひどっ!いつの間に!?」

思わずムキになって、じたばた暴れた。

専務は、ワハハと声をあげて明るく笑って、いっそう強く私を抱きしめた。

私が疲れて抵抗できなくなるのを待って、専務は囁いた。

「 許せ。……にほちゃんをナマで感じたかったんだ。……それに、子供も産んでほしいのも、本音だ。」

……ずるい。
そんなの、身勝手だ。

「私の意志は無視ですか。……暴君ですね。最低。」

むくれてそう言ったら、専務は少しムッとしたようだ。
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