専務と心中!
「無視してたら、とっくに押し倒してる。にほちゃんが心を開いて、俺を受け入れてくれてるのを確信してるから、こうしてるんだ。」

「あ!開き直ってる!もうっ!ものすごーく身勝手!」

ぷんぷんしてそう言ったけど……専務と目が合うと……笑えてきてしまった。

……愛しい。
ただ、愛しい。

つきつめたら、それだけ。

意地はるの、馬鹿馬鹿しいよね?


私は小さく深呼吸して、言った。

「専務。約束して。……独りで勝手に考えて、行動しないで。先に相談して。何でも。」

私の気持ちは、ダイレクトに伝わったらしい。
専務は神妙にうなずいた。

「わかった。約束する。」

ハッキリキッパリそう言ってくれた専務に、私もまた真面目にうなずいた。

「お願い、します。」

安心したのだろうか。
まるで、暗示にかかったかのように、まぶたが重くなってくる。

睡魔に襲われるー。

とろーんとしてる私をなでて、専務もまた瞳を閉じた。

薄ぼんやりと、スタンドランプが灯ったまんま、私達は抱き合って眠りについた。
心も身体も満たされた幸せな夜だった。




翌朝、目を開けた時、専務はいなかった。

……あれ?
シャワーでも浴びてはるのかな。

まだボーッとする頭で無理やり起き上がり、バスローブを羽織ってから、バスルームへ向かった。

いない。

んー?
まさか、置いてきぼり?
逃げられた?

……まさか……ね。


時計の針は6時をさしている。
とりあえず、シャワー浴びよっと。

出勤しなきゃ。
ここから会社って、電車なら30分……もっとかかるな。

着替えなんか、もちろん準備してない。
昨日お借りした遥香さんの服を、続けて着させてもらうしか、仕方ない、か。

……焼き肉臭いかな。
ファブリーズしとけばよかった。


あれ?
ない。
洋服も、下着も、ない。
……え?

バスルームから出て、途方に暮れた。

専務ー!?
この状況、なにー?

とりあえず髪を乾かしてると、ドアのほうからガチャガチャ音が聞こえてきた。
無視してドライヤーをかけてると、専務がいくつもの紙袋を持って現れた。

「何だ。起きちゃったのか。俺が起こしたかったのに。……おはよう。」

いつも以上に蕩けそうなニコニコ顔。
上機嫌な専務に、私は口をとがらせた。

「もう。置いてきぼりにされたのかと思いました。ひどい。……夕べお願いしたのに。勝手に、いなくなるとか、最悪です。」
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