COLORS
「ねぇ、ゆり、写真……」
「学校で名前は呼ばない、そう言ったのは、あなたでしょ、上野先生」
「もう、いいんだよ。今日で最後なんだから」
後藤ゆりは、ベンチに座ったまま、上野 礼を、見上げている。
「……まさか、自殺未遂までするとは思ってなかったよ。その理由が、私なんかに別れを切り出されたからだなんて、らしくない」
「ゆりだって……俺のことなんか見捨てて、逃げればよかったのに。わざわざ助け呼んで、そのせいで、俺らの関係バレて処分とか……ゆりってバカだったんだな、意外」
「それ、本気で言ってる?」
「嫌味だよ……ゆりも一緒に死んでくれると思ってたのに」
一時は、そうあるべきだと思っていたかもしれない。
それが、最大の幸福であるような気がしていたかもしれない。
けれど……
「礼を、取り返しのつかないとこまで行かせられないから」
それでも、護りたい、と、思ったのかもしれない。
「優しいねぇ、女神様みたい。でも、だから、俺みたいなクズに引っかかって、ゆりの人生、滅茶苦茶……」
そうして、できることがあるのなら、
「それでいいんだよ」
「そう、寂しいね」
振り返らないこと。
「全部、許してあげる」
「そう、悲しいね」
それも、きっと、一つの、想いの形。
だから……
「礼のことなんか、跡形もなく、忘れてあげる」
「そう、ありがと」
そんなことを考えながら、後藤ゆりは、まるで覚悟を決めたかのように、ベンチから立ち上がると、
胸の花を引きちぎり、
上野 礼に、投げつける。
「じゃあね、サヨナラ、不良教師!!」
その花が、何の花なのか、いまだ、わからないまま。
「ああ、サヨナラ……」
風は、まだ、冷たい。
桜は、まだ、咲いていない。
咲いていたのは、
あか、しろ、あお、くろ、
褪せない、色。
おめでとう。
あか、しろ、あお、くろ、
それぞれの、色。
卒業、おめでとう。
完
20151210 優臣
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