泥酔彼女
不意に唇に触れたのは、先程貪ったばかりの感触だった。
爪先で伸び上がって身長差を埋めた沢村が、俺にキスしてきた。
それも、とびきり下手くそなキスを。
かつん、と前歯がぶつかって、なのにそれでも彼女は離れなかった。
嗚呼、そうか、これは彼女の答えなのか。
成る程、千の言葉より余程雄弁で効率が良い。
理解した俺は、ふっと息を漏らして笑ってしまった。
それなら俺も、今は言葉を使わずに答えよう。
彼女の唇を押し開き、舌を優しく差し入れて、先程の貪るようなものとは違う、ゆっくりと味わうようなキスをする。
沢村のぎこちない舌がそれに必死で応えてくれるのが、とても愛おしかった。
やっぱり俺は、こいつが好きだ。
酒に酔えばおよそ女らしくないし、ちゃっかりしてるし割と毒舌だけれど。
見てると指で突っ付きたくなるえくぼだって、今は好きで堪らないんだ。
重なる唇を静かに外す。