泥酔彼女
「お前さ、……もしかして、妬いてんの?」
「!!」
俺の自惚れや思い上がりでなければ、それしか考えられない。
沢村は呆けた表情のまま固まって、俺を見上げている。
柄にもなく心臓の動悸が煩くなってくる。
もし。もし彼女がそれを認めてくれたなら。
今なら俺は、言えるかもしれない。
友達で居たいから、なんて言い訳をして心地良い距離を保とうとしていた狡い俺から一歩踏み出して、男としてお前が欲しいと。
沢村の濡れた唇が淡く開く。
紡がれるだろう次の言葉を待って、俺は祈るように息を呑んだ。
頼むからイエスと言ってくれ。俺にちゃんと言わせてくれ。
彼女の細い両手が持ち上がって、その指先が俺の頬を包むように触れた。
……触れた? いや、違う。
がし、と力が籠もって、要するにこれは、顔を掴まれたんだ。
両頬がむにっと圧迫される。
このシリアスな局面で俺をたらこ唇にしやがるのかこの女は。
「てめ、何しやが───」