陽のあたる場所へ
…元気?全然、元気なんかじゃないよ…
…お願い…あの一言を言ってよ…
「沙織、大丈夫か?」って、言ってよ…
…駄目だ…何、亮に甘えようとしてるんだ…
それはできない、と思うと、もっと胸が苦しくなる。
「うん、元気でやってるよ。もう毎日、仕事忙しくて…」
沙織の口から、気持ちとは反対の言葉が出る。
「そうか。例の嫌な上司とは、何とかうまくやってんのか?」
亮と再会したあの日、沙織の様子を心配してくれた亮に、苦し紛れに冗談めかして言った龍司の話を持ち出され、沙織の心は動揺する。
「あ、うん、大丈夫。最近はあまり怒られることもないし、寧ろ少しだけ当たりも柔らかくなって…」
沙織は、お茶がかかって軽い火傷をした日の龍司の言葉を思い出す。
普通なら、誰でも口に出すようなありきたりな言葉なのに、そんな言葉さえ掛けて貰った記憶がないので、あの時、沙織の胸は温かくなった。
こんなことになるんだったら、冷たく意地悪な上司のままの方が、彼を忘れる為には良かったかも知れないのに…などと思ってみる。
「そうか、良かったな。沙織の頑張ってるとこ、ちゃんと見ててくれてるのかもな」