陽のあたる場所へ
沙織と共に乗り込んだタクシーの後部座席で、龍司は何度かかかって来た電話の応対をする以外は、腕を組んで目を閉じていた。
仕事の事を考えているのか、
毎日が多忙過ぎて睡眠不足なのか、
単純に、ただ自分と話したくないのか、
いずれにしても、邪魔はしない方がいいと思ったし、下手なことを言って、また険悪な雰囲気になるのも避けたかったので、沙織はずっと声をかけずにいた。
タクシーの運転手も、そんな雰囲気を察してか、必要なこと以外は何も話しかけて来なかった。
信号待ちの交差点で、外を歩く人達をぼんやりと眺める。
仕事帰りの人、飲み会帰りのサラリーマン風のグループ、デートを楽しむ恋人達、
一日の仕事に疲れ、脱力した表情だったり、
足早に歩く人が、寒さに顔をしかめていたり、
お酒を飲んで、気分が良くなって笑い合っていたり、
見つめ合う、愛に溢れた表情だったり、
よく見る光景の、よく居る人達の中にも、それぞれの人生がある。
みんな充実した毎日を送っているのだろうか…
そんな中にも、悩みがあったり、
幸せを感じたり…
信号が青に変わり、車の波が動き出す。
車が走る速度で、一瞬だけ目に映っては消える人々も、毎日、何かと闘ったり、何かを支えにして、生きているのだろう…。