恋は盲目

龍ちゃんのシャンプーの香りが好きだった。

高校生の頃から、そばを通ると香るほのかな匂いは私の心をくすぶった。

ベッド脇に座る、煙草を吸う龍ちゃんの背中を見つめる。

ずっとこの広い背中に憧れて、
手を伸ばしても届かなかった背中がいまここにある。

私はそっと肌に触れる。

少し冷たい。
長くベッド脇に座り冷えてしまったようだった。

「どうしたんだよ」

急に背中に触ったからか、龍ちゃんはピクッと反応して私のほうに振り向いた。

「冷えちゃってるなって」

私は顔を赤らめ笑いかける。

「じゃあ朋があたためてよ」

龍ちゃんは吸っていた煙草を灰皿に置き、ふとんの上から私の身体に覆い被さる。

「…うん」

私達は唇を重ね、龍ちゃんが私の肌に触れる。
私は触れられる度漏れる甘い声に恥ずかしさを覚えながら、龍ちゃんを受け入れる。

このとき、私はふと思う。


私の好きだった龍ちゃんのシャンプーの香りは、煙草のにおいにかき消されてもうしないということに。



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