恋は盲目
午前8時。
私はいつものように黒いコートを着て、白のマフラーを巻いてマンションを出る。
目が冴えるような朝の気候。
起きてすぐ、あんなに眠かったのが嘘のようだ。
大学まで歩いて約30分。
人通りが多いとはいえないこの道を歩くことは、私は嫌いではない。
大学に着くまでは誰にも干渉されたくない。
朝の静かな道を歩いていると、心が落ち着いた。
龍ちゃん……。
昨日龍ちゃんが触れた感触、ぬくもりは今も覚えている。
このぬくもりを忘れてしまわないうちに、また会えたなら。
龍ちゃんと会った次の日はいつもそう思う。
でもなんだろう。
この心のもやもやは。
私は、龍ちゃんのそばに居られるだけで満たされているはずなのに。
この満たされない心はなんなのだろう。
司の言葉を思い出す。
『もうやめなよ。苦しいだろ、こんな関係を続けるのは』
手を伸ばせば届く、龍ちゃんの背中。
手を伸ばしても届かない、龍ちゃんの心。
私がどんなに足掻こうと、
私は、龍ちゃんとは結ばれない。
これはきっと、神様が決めた運命なのかもしれない。
現実から逃げていないで、
もう受け入れなければいけない時がやって来たんだ。