アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜



 公子はバックのバーゲンがどうとか言って、まだ妙子と話していたので、那智は湯呑みを片付け、先に失礼することにした。

 遥人が少し遅れて出てくる。

「死んだって言わなかったか」
としつこく訊いてくるので、

「だーかーらー、言ってませんって。
 母親は今、居ないって言ったんです。

 っていうか、ほとんど居ません。

 昔から、あんまり見たことないです」
と言うと、

「じゃあ、ほぼ一人暮らしなのか」
と訊くので、

「ほぼもなにも完全に一人暮らしですよ。
 たまに母親だの愛人だのが現れない限りは」
と愚痴るように言う。

「じゃあ、お前のうちでもいいな」
「なにがです?」

「俺を寝かしつけるのがだ」

「えー、専務。
 昨日で終わりじゃなかったんですか?」

「俺は毎晩不眠症だ
 何故、今日は逃げられると思った」
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